Entries from 2009-10-01 to 1 month
結核の文学の歴史の最新作を読む。文献は、Lawlor, Clark, Consumption and Literature: the Making of the Romantic Disease (New York: Palgrave Macmillan, 2006). 結核の文学は、スーザン・ソンタグの有名な著作『隠喩としての病』でも取り上げられてい…
必要があって、痛みの文化史の視点から「痛みのポルノグラフィ」を論じた論文を読む。文献は、Halttunen, Karen, “Humanitarianism and the Pornography of Pain in Anglo-American Culture”, American Historical Review, 100(1995), 303-334. 筆者が「痛み…
今週末、10月31日・11月1日と、慶應義塾大学・日吉キャンパスで第13回の精神医学史学会が開催されます。 8つのパネルディスカッションなど、盛りだくさんの内容になっています。どなたでもご参加できますが、参加費が8000円必要です。どうぞ、ふるって、足を…
一海知義の『漢詩一日一首 秋』を読む。秋の漢詩は何かを憂うものが多い。秋の憂いの感覚が、昔の日本人の感性にはあっていたのかな。私は、たぶん現代の日本人の多くと同じように、余情を表現するときには「やまとことば」、鋭い言い切りが欲しいときには「…
必要があって、臨床医学の人間学化を論じた古典的な著作を読む。文献は、Cassell, Eric J., The Nature of Suffering and the Goals of Medicine, 2nd edition (Oxford: Oxford University Press, 2004) 著者は優れた臨床の教授で、初版が1991年に出て、その…
必要があって、麻酔の歴史を読む。文献は、Snow, Stephanie J., Operations without Pain: the Practice and Science of Anaesthesia in Victorian Britain (New York: Macmillan, 2006).麻酔というのは医学の多くの領域にわたって巨大な影響を与えた、19世…
必要があって、水俣病についての書物に何冊か目を通す。文献は、原田正純『水俣病』『環境と人体』『水俣が映す世界』『水俣学講義』など。著者は熊本大学の医学部の研究者として胎児性水俣病を発見・研究した当事者で、その後も水俣病に深くかかわり、何冊…
必要があって、紀元前3世紀のアレクサンドリアの医者・解剖学者、ヘロフィルスについての決定版の書物のイントロダクションを読む。文献は、Staden, Heinrich von, Herophilus: the Art of Medicine in Early Alexandria (Cambridge: Cambridge University …
新国立劇場でヴェルディ『オテロ』を観る。私が一番好きなオペラの作品で、たぶん5回くらい観ている。新国立劇場で観るのは二回目だけれども、このプロダクションだったかどうか記憶があやふやである。そう思う理由は、このプロダクションだったら、かなりの…
必要があって、アメリカの医療において「科学」が持った歴史的な意味についての研究レヴューを読む。文献は、Warner, John Harley, `Science in Medicine,' Osiris, 2nd ser., 1985, 1: 37-58.これは、アメリカでそれまでの「医学史」に代わって「医療の社会…
必要があって、日本の診療報酬が決まるメカニズムを論じた書物を読む。文献は、結城康博『医療の値段―診療報酬と政治―』(東京:岩波新書、2006)日本の医療は医者と患者の双方にかなりの程度の診療と受療の自由を認めながら、医療の価格については国が一律…
必要があって、日本医師会を取材して数十年のジャーナリストが書いた書物を読む。文献は、水野肇『誰も書かなかった日本医師会』(東京:草思社、2003) 筆者は、新聞記者から転じて医事評論家の草分けのような存在になった人物で、武見太郎や厚生官僚をはじ…
必要があって、帝国ローマの死亡の季節性を論じた論文を読む。文献は、Shaw, Brent, “Seasons of Death: Aspects of Mortality in Imperial Rome”, Journal of Roman Studies, 86(1996), 100-138. 死の歴史の研究は、二つの大きく違ったアプローチがある。片…
必要があって、武見太郎の伝記を読む。文献は、三輪和雄『猛医の時代 武見太郎の生涯』(東京:文芸春秋社、1990)武見太郎は1904年に生まれて1983年に没した。彼を有名にしているのは、1957年から82年の長きにわたって日本医師会の会長を務め、厚生(労働)…
必要があって、リハビリテーション医学の概説書を読む。文献は、砂原茂一『リハビリテーション』(東京:岩波書店、1980) 著者は結核からリハビリテーションへと進んだ医者で、その著作は鋭く明確で、このブログでも何度か取り上げた。この書物も、1980年に…
必要があって、アメリカの環境史の指導的な研究者が、西部の大平原の Dust Bowl (この間オーストラリアであった砂嵐のようなものだろうか)についての歴史家たちの解釈の違いを素材にして、歴史にとって「物語」とは何かという問題に深い思索をめぐらせた論…
必要があって、アナール派の大家の「気候の歴史」の導入部分を読む。文献は、エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ『気候の歴史』稲垣文雄(東京:藤原書店、2000)。若書きの書物だそうだけれども、素晴らしいリサーチと惚れ惚れするような議論の運びで、全部…
必要があって、東大精神科の教授であった三宅鉱一の事績録を読む。文献は、金子準二『三宅鉱一博士事績』(東京:大空社、1988) 三宅鉱一は、1876年に東京に生まれ、東大医学部卒、ドイツ留学というお決まりのコースを経て、1925年に東京帝国大学の医学部の…
必要があって、黄熱病の感染経路の発見の歴史書を読む。文献は、Delaporte, Francois, Hisotire de la Fièvre Jaune: Naissance de la médecine tropicale (Paris: Éditions Payot, 1989), フランソワ・ドラポルト『黄熱の歴史』池田和彦訳(東京:みすず書…
必要があって、江戸時代の人参熱について、人参の歴史のレファレンスをチェックする。 文献は、今村鞘『人参史』全七巻 (1934)、これは、思文閣から1971年に揃いでリプリントが出ている。江戸時代の初期には、人参の薬効自体は知られていたが、人参を用いる…
必要があって、イングランドの結核の社会史の書物を読みなおす。文献は、Bryder, Linda, Below the Magic Mountain: A Social History of Tuberculosis in Twentieth-Century Britain (Oxford: Clarendon Press, 1988). 結核の歴史というのは多様なアプロー…
必要があって、健康転換、特に所得と平均寿命を論じた古典的な論文を読む。文献は、Caldwell, John C., “Routes to Low Mortality in Poor Countries”, Population and Development Review, 12(1986), No.2, 171-220. 実は、この論文は何度も引用されている…
先日の記事で精神病患者の平均余命と生命保険会社の話をしたけれども、コメントを受けてちょっと気になったので、平均余命と生命表の誕生の話を読みなおす。文献は、Eyler, John M., Victorian Social Medicine: the ideas and Methods of William Farr (Bal…
必要があって、大正期の京都の工場で行われた適性検査の実施記録を読む。文献は、増田幸一「適性検査法の実際(捺染工場に於ける実施記録)」『能率研究』3(1925), 299-379. いわゆる科学的な労働管理によって産業能率を上げる「テイラリズム」が日本に導入…
『16・17世紀イエズス会日本報告集』松田毅一監訳(東京:同朋社、1987)より、たまたま天草の天然痘の流行に居合わせて、悲惨さに心を痛めると同時に、内心ほくそ笑むイエズス会士たちの姿が垣間見えたので記事にする。「内心ほくそ笑む」というのは穏やか…
いただいた論文を読む。文献は、横田陽子「日本近代における細菌学の制度化―衛生行政と大学アカデミズム」『科学史研究』48(2009), 65-76.日本の明治から大正期の細菌学を、アカデミズムと衛生行政の二元論で分けたときに、これまで知られている事例がどのよ…
必要があって、18世紀のイングランドの法廷で証言した人々の「言語」を分析した論文を読む。文献は、Rabin, Dana Y., “Searching for the Self in Eighteenth-Century English Criminal Trials, 1750-1800”, Eighteenth-Century Life, 27(2003), 85-106.18世…
徳川時代の京都で成功した蘭方医、新宮涼庭の伝記を読む。文献は、山本四郎『新宮涼庭伝』(京都:ミネルヴァ書房、1968) 新宮(1787-1854) 丹後の由良で生まれ、江戸で2年医学を学んだが、21歳のときに『西説内科撰要』を読んでオランダ医学にめざめ、181…
必要があって、いただいた書物を読む。文献は、杉田米行編『日米の医療―制度と倫理―』(大阪:大阪大学出版局、2008)医療サービスの提供の仕方は、どの先進国でも問題になっていて、どのような制度を設計するのかという研究も盛んに行われている。一方の極…
必要はなかったが、純粋なミーハー精神に基づく好奇心で(笑)、今から半世紀前の覚醒剤調査の資料を読む。文献は、手書き・ガリ版刷りの資料で、表紙には、参議院厚生委員会専門員室『覚醒剤に関する調査資料』(昭和26年3月)。六大都市の覚醒剤に起因する…