Entries from 2007-05-01 to 1 month

精神医学とモダニズム

必要があって、モダニズムと心理学・精神医学の関係を論じた論文集を読む。文献はMicale, Mark S., The Mind of Modernism: Medicine, Psychology and the Cultural Arts in Europe and America, 1880-1940 (Stanford, Ca.: Stanford University Press, 2004…

精神医学の名著50

評判が良かったので買ってみた福本修・斉藤環編『精神医学の名著50』(東京:平凡社、2003) を読む。 20世紀の精神医学の名著を50冊選んで一冊ずつ解説したいわゆるアンチョコ本だけれども、水準が高く読んで楽しいアンチョコ本である。それぞれの本が…

辻邦夫『安土往還記』

ふと確かめたいことがあって、辻邦生『安土往還記』(新潮文庫)のページを繰る。イエズス会士とともに日本にやってきたひとりのジェノア人が見た信長を主人公にした歴史小説である。ここに登場する信長は「意志の人」であり、何かを達成するためには、人命…

バイオメディシンのプラットフォーム

必要があって少し前に最初の数章だけ読んだ現代医学の社会学の著作に目を通す。文献は、Keating, Peter, and Alberto Cambrosio, Biomedical Platforms: Realigning the Normal and Biomedical in Late Twentieth Century Medicine (Cambridge, Mass.: The M…

医療と専門分科

未読山の中から、一度読んだ論文が出てきた。著者のファンなので、喜んでもう一度読み直して、議論を整理して頭に入れる。文献はWeisz, George, “The Emergence of Medical Specialization in the Nineteenth Century”, Bulletin of the History of Medicine…

独身者の疫学

未読山の中からアメリカのフロンティアの不健康についての論文を読む。文献はCourtwright, David T., “Disease, Death and Disorder on the American Frontier”, Journal of the History of Medicine and Allied Sciences, 46(1991), 457-492. アメリカ開拓…

『赤ひげ診療譚』

授業の準備で山本周五郎『赤ひげ診療譚』(新潮文庫)を読む。1958年の『オール読物』に連載され、私は観たことがないが(またこれか・・・苦笑)、黒澤明監督で映画化(『赤ひげ』1965年)もされた。 ブラック・ジャックをのぞけば、日本で一番有名な医者は…

19世紀フランスの医療

未読山の中から19世紀パリ近郊の農村部の医療についての論文を読む。文献はAckerman, Evelyn, “Medical Care in the Countryside near Paris, 1800-1914”, Annals of the New York Academy of Sciences, no.412(1983), 1-18. パリ近郊の農村部に医療と公衆衛…

サウス・カロライナのマラリア

未読山の中からサウス・カロライナのマラリアについての論文を読む。文献はDubisch, Jill, “Low Country Fevers: Cultural Adaptations to Malaria in Antebellus South Carolina”, Social Science and Medicine, 21(1985), 641-649. カリブ海からアメリカ南…

アフリカのマラリアをめぐる四つの物語

未読山の中から第二次世界大戦後のアフリカのマラリアを論じた論文を読む。文献はMcGregor, JoAnn, and Terence Ranger, “Displacement and Disease: Epidemics and Ideas about Malaria in Metabeleland, Zimbabwe, 1945-1996”, Past and Present, No.167(2…

1900年ボストンのくる病

未読山の中からボストンのくる病についての論文を読む。 Morse, John Lovett, “The Prequency of Rickets in Infancy in Boston and Vicinity”, Journalof the American Medical Association, 34(1900), 724-726. 一つの調査をしてそれをまとめたシンプルな…

『不平等が健康を損なう』

未読山の中から社会疫学の入門書を翻訳で読む。文献はイチロー・カワチ、ブルース・P・ケネディ『不平等が健康を損なう』西信雄他監訳(東京:日本評論社、2004) 所得格差が小さく、人々が信頼関係で結ばれている社会の人々は、そうでない社会に較べて、幸…

ど根性の健康法

肥田春充『川合式強健術』(東京:大正14年)図書館で借りたい本の隣に並んでいたので、思わず借りて読んでみる。これがとても面白かった。 肥田春充(1883-1956)は、大正・昭和戦前期には人気があった健康法の提唱者である。腹式呼吸の一種である「川合式強…

健康法の歴史

必要があって、健康法の歴史を二冊読む。文献は田中聡『健康法と癒しの社会史』(東京:青弓社、1996)と瀧澤利行『健康文化論』(東京:大修館書店、1998) 田中は、近代日本の医療や健康法、民間療法や衛生展覧会などについて沢山の本を書いている。カルス…

16世紀ロンドンのエリート医師たち

必要があって、16世紀ロンドンの王立医師協会についての研究書を読む。Pelling, Margaret, Medical Conflicts in Early Modern London (Oxford: Clarendon Press, 2003). ペリングが二十年の準備期間を経て書いた書物で、数年に一冊あるかどうかの医学史研究…

日本文化の本質としてのバブル経済文化

昨日と同じ著者の『奇想の図譜 からくり・若冲・かざり』(ちくま学芸文庫、2005) を詠む。 北斎、若冲、白隠などを中心に、絵解きの妙を味わうことができる。北斎が馬琴の読本につけた挿絵が、オランダからもたらされた博物学書などにヒントを得ていたこと…

『奇想の系譜』

近く京都の相国寺に若冲展を観に行く。その準備も兼ねて、前から読みたかった辻惟雄『奇想の系譜』(ちくま学芸文庫、2004)を読む。 今から四十年近く前に、江戸の絵画についての斬新な解釈を出した書物とのこと。当時のアカデミックな日本美術史であまり知…

二つの文化

必要があって、C.P.スノウの「二つの文化」論を読む。文献は、C.P. Snow, The Two Cultures, intro. By Stefan Collini (Cambridge: Cambridge University Press, 1998). この刊本には、 1959年のオリジナルの出版から4年たって、批判者に答えた小文である T…

ディーテイルズNo.6 第三ヒント

ディーテイルズ? No.6 です。 絵の一部を見て、どの絵かを当てるベタなクイズ。 第三ヒント中です。 一日か二日に新しいヒントが一枚ずつ増えていきます。 正解が分かりましたら、「内緒」で書き込んでくださいませ。前回の番外編は、ひとみどんさんが一発…

芍薬の首飾り

18世紀のロンドンの売薬の販売の研究を読む。文献はDoherty, Francis, “The Anodyne Necklace: a Quack Remedy and Its Promotion”, Medical History, 34(1990), 268-293. 緻密で丁寧なリサーチに基づいて洗練された分析がされた論文である。 18世紀のロンド…

アズテカの医学

未読山の中からアズテカ文明の医学についての概説的な論文を読む。文献はGuerra, Francisco, “Aztec Medicine”, Medical History, 10(1966), 315-338. アズテカ文明の医学について、幾つか面白いことを知った。神々の母である女神が薬、薬草の神であり、医者…

ディーテイルズ・番外編

ディーテイルズの番外編です。これは、数年前に New York Review of Books で、論争(?)にまでなった難題で、実は私もよく分かっていないのですが。 上の二枚は、18世紀末のフランスの人気肖像画家エリザベス・ヴィジェ=ルブランが、娘と一緒の自分を描い…

ポン=ヌフの虫歯抜き

昨日紹介したコリン・ジョーンズが、18世紀のパリの歯医者について書いた面白い論文を読む。 文献は、Jones, Colin, “Pulling Teeth in Eighteenth-Century Paris”, Past and Present, No.166(2000), 100-145. 博識と洞察を軽々と身にまとった、軽妙に見えて…

健康の「ブルジョア公共圏」

必要があって18世紀フランスの地方新聞の健康関連商品の広告を分析した、視野がとても広い優れた論文を読む。文献はJones, Colin, “The Great Chain of Buying: Medical Advertisement, the Bourgeois Public Sphere, and the Origins of the French Revolut…

免疫学のメタファー

未読山の中から、現代の免疫学が用いるメタファーを分析したカルチュラル・スタディーズの論文を読む。文献は Martin, Emily, “Toward an Anthropology of Immunology: The Body as Nation State”, Medical Anthropology Quarterly, new series, 4(1990), 41…

ショッピング・モールの医学

未読山の中から、医療が行われる建築空間を論じた短い本を読む。 文献は、Sloane, David Charles and Beverlie Conant Sloane, Medicine Moves to the Mall (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2003). 医療の建築の研究というのは新しいトピッ…

熱い社会と冷たい社会

必要があって、クロード・レヴィ=ストロース『野生の思考』大橋保夫訳(東京:みすず書房、1976)を本棚から引っ張り出してきて読む。 今日もちょっと研究の話をする。明治以降の日本において、漢方医は激減したのに、漢方薬はなぜしぶとく生き残ったのかと…

医療の多元性

必要があって、医療の多元性の歴史の古典的な研究書を読む。文献は、Ramsey, Matthew, Professional and Popular Medicine in France, 1770-1830: the Social World of Medical Practice (Cambridge: Cambridge University Press, 1988). 同書は、これまで正…

恋の病を治すには・・・

未読山の中から、ヨーロッパ中世の恋の病についての研究書・テキストが出てきたのでさっと目を通す。時間があったらもっとゆっくり読みたい、味わい深い本とテキストなのだけれども。文献は、Wack, Mary Frances, Lovesickness in the Middle Ages: The Viat…

精神鑑定とヒューマニズム

必要があって、刑事精神鑑定の本を読む。文献は、先日永眠された秋元波留夫による『刑事精神鑑定講義』(東京:創造出版、2004)。 帝銀事件(S23)、島田事件(S29)、三芸プロ事件(S39)、大本教事件(T10)、連続幼女誘拐殺人事件(S63-H1)の5つの事件の精…