Entries from 2013-12-01 to 1 month

斎藤茂吉と青山脳病院・メモ

北杜夫『青年茂吉―「赤光」「あらたま時代」』(東京:岩波書店、2001) 北杜夫『壮年茂吉―「つゆじも」~「ともしび」時代』(東京:岩波書店、2001) 北杜夫『茂吉彷徨―「たかはら」~「小園」時代』(東京:岩波書店、2001) 北杜夫『茂吉晩年―「白き山」…

『<狂気は文明である>―精神医学の診断が社会的であったとき 1948-1980年』

Staub, Michael, Madness Is Civilization: When the Diagnosis was Social, 1948-1980 (Chicago: University of Chicago Press, 2011). 『<狂気は文明である>―精神医学の診断が社会的であったとき 1948-1980年』 20世紀後半の精神医学を、アメリカの文化…

精神疾患の患者自身による精神疾患―アンソロジー 

Bert Kaplan eds., The inner world of mental illness : a series of first-person accounts of what it was like (New York: Harper and Row, 1964). 精神医療の歴史には数多くの「アンソロジー」が出版されている。50年前の著作だが、すぐれたアンソロジ…

「痛みの現象学」コンファレンス(1月4日 東大駒場)

The University of Tokyo Center for Philosophy, Uehiro Research Division, Philosophy of Disability & Co-existence Project (UTCP/PhDC) 3rd International Conference Phenomenology of Pain Saturday, Jan. 4, 2014, 13:00-17:00 Venue: Komaba I Cam…

チョコレート賛歌―最後のスタンザ?

この詩はAABBの韻律ですが、最後のスタンザの二行目の行末に、前の行の Pooreと韻を踏む語が一つ隠れているのだろうと思います。ここには、どんな単語が入ります?Whore ? THE TRANSLATOR To every Individuall Man,and Woman, Learn’d, or unlearn’d,Hones…

戦前の避妊と優生学について、映画『温泉芸者』について

山高しげり『山高しげり著作集』全五巻(東京:学術出版会, 2007) 戦前から女性運動にたずさわり、戦後に女性国会議員となった山高しげりの著作を斜め読みしてメモ。 避妊と優生学 安心して母体たりえるときこそ婦人は幸福感を持つが、男子偏重の家庭制度で…

『ごちそうさん』と出産の空間のコード

ここ数日、朝ドラの『ごちそうさん』を見ている。評判通りのとても面白い作品だと思う。今日は主人公夫婦に赤ちゃんが生まれるおめでたいお話。そこで出産の民俗が重要な背景になっていた。これは、かなり研究されてきた主題だと思うけれども、自分で勉強で…

『写真週報』の優生結婚

「これからの結婚はこのように」『写真週報』no.218(1942) よりメモ 健民運動5月1日―8日 大東亜共栄圏という大事業をやり遂げるには何といってもまず人です。強い、有能な人が将来もますます必要なのです。その人を殖やすには先決問題として結婚を促進しなけ…

優生学と精神医学の歴史メモ

尹健次「民族幻想の蹉跌―『日本民族』という自己提示の言説」『思想』no.834, 1993年12 月号, 4-37. 「日本民族」という概念についての古典的な論文を読んで、優生学の歴史の執筆の断片をメモ。 日本の優生学の最も重要な目標は、戦前・戦中においては、健康…

三田村鳶魚「恋の病」という医学史随筆

江戸研究者で随筆の名手である三田村鳶魚に「恋の病」という医学史エッセイの傑作がある。初出は『医学及医政』という雑誌の1919年11月号で、「鳶魚江戸文庫」の31巻『近松の心中物・女の流行』に収められている。 労瘵(ろうさい)という疾病について縦横に…

モスコーソ「近代の情念―怨恨・嫉妬と強迫行動の誕生」(講演)

医療・文化・社会研究会(慶應義塾大学) ハビエ・モスコーソ教授講演(マドリード、哲学研究所) 近代の情念 ―怨恨・嫉妬と強迫行動の誕生 Passions of Modernity: Resentment, Jealousy, and the Birth of Obsessive Behaviour 2014年 1月11日(土)17:00-…

『千夜一夜物語』の反ユダヤ主義

『千夜一夜物語』に「マスルールとザイン・アル・マワシフの恋」と題された物語があり、大場正史訳だと第10巻におさめられている。商人のマスルールが、金持ちで美しい人妻であるザイン・アル・マワシフとの恋を成就させる話である。二人がチェスをさしなが…

『日本医史学雑誌』59巻4号

『日本医史学雑誌』59巻4号が刊行されました。原著論文が6本、ひろばが1点、資料に華岡青州の門人録、ゼンネルト、池田文書の3点、書評が2点、書籍紹介が3点です。 近年に顕著な傾向ですが、ようやくこの雑誌でも国際化がはじまっています。原著論文は、スイ…

ジェレミー・グリーン先生講演会その2(1月16日)

東大薬学部の津谷先生が、グリーン先生の講演会をもう一つ開催してくださいます。こちらは、1月16日、東大本郷キャンパスにて、主題はアメリカにおける医師と製薬企業の関係の歴史になります。よろしくお願いします。 講 演 会 米国における医師-製薬企業関…

ジェレミー・グリーン先生の講演会(1月17日)

2013年度の医療・文化・社会研究会の例会のお知らせです。ジョンス・ホプキンス大学で医学史を教えるジェレミー・グリーン先生から、「治療革命再考」と題された講演をいただくことができます。場所は、慶應三田キャンパス、1月17日の夕刻になります。 2013…

科学史と医学史―サートンとジゲリスト

『科学史研究』に執筆予定の医学史の過去・現在・未来の論評のメモです。まだ断片的なものです。ご批判をお待ちしています。 科学史と医学史は、大学の制度としては理学部と医学部という違う学部に所属し、二つの分かれたディシプリンとして別個の道を進んで…

中村江里「日本帝国陸軍と『戦争神経症』」

待ち望んでいた論文である、中村江里「日本帝国陸軍と『戦争神経症』」を頂く。『季刊 戦争責任研究』の81号(2013年冬季号)に掲載された論文。アジア・太平洋戦争中の日本の戦争神経症についての、本格的な歴史研究を開拓する非常に重要な論文である。まだ…

ベトナム戦争のPTSD概念と、ホロコースト・広島原爆の「生存者症候群」との関係

Shephard, Ben, A War of Nerves: Soldiers and Psychiatrists 1914-1994 (London: Pimlico, 2000) イギリスとアメリカにおける<PTSD>の通史を論じた書物。鉄道神経症から第一次大戦・第二次大戦を経て、ベトナム戦争と湾岸戦争の兵士のPTSDまで、PTSDとそ…

コレラによる東大卒業式の延期・1882年(明治15年)

日本の出版界の麗しい習慣だが、全集や講座などが順次刊行されるのに合わせて、「月報」などと銘打った小さな刊行物が添えられる。学者が書いた珠玉の随筆である「学海余滴」が掲載されることが多い。新しい全集に、知人が書いているのを読むのも楽しいが、…

医学史の研究動向のまとめ―ケンブリッジ編

Wear, Andrew, Roger French and I.M. Lonie eds., The Medical Renaissance of the Sixteenth Century (Cambridge: Cambridge University Press, 1985) French, Roger and Andrew Wear, eds, The Medical Revolution of the Seventeenth Century. Cambridge…

精神医学と研究用映画

Anthony R. Michaelis, Research films in biology, anthropology, psychology, and medicine (New York: Academic Press, 1955) 科学研究のための映画撮影は20世紀に入ると一般的になった。本書は生物学、人類学、心理学、精神医学、医学における映画の利用…

加藤弘之メモ

田畑忍『加藤弘之』(東京:吉川弘文館, 1986) 加藤弘之について少し詳しく調べる必要があって伝記をチェックした。 加藤はもともと兵学を学び蕃書調所の忠実な幕臣から、新政府に出仕して最終的には東大の総長となった人物である。人権思想から転向して官…

『ルルドの群集』と医学・宗教・治療

J.K.ユイスマンス『ルルドの群集』田辺保訳(東京:国書刊行会, 1994)よりメモ。この書物の取材をし、執筆し、仕上げていたときは、ユイスマンスが口腔癌で死に至る終末期であったが、ユイスマンスはルルドに何回か訪れて取材をしている。 19世紀後半のルル…

金子光晴『マレー蘭印紀行』(1940)

詩人の金子光晴は、1928年から32年にかけて長い異国放浪の旅をした。中国、東南アジア、パリなどが中心で、その旅行や滞在のことを記した自伝的な文章の一つである。『マレー蘭印紀行』の出版は1940年だから、南洋ブームに便乗した出版なのだろうか。いくつ…

日本の戦争神経症(戦後のアメリカ精神分析との出会い)

W.C. Menninger and Munro Leaf, You and psychiatry (New York: C. Scribner, 1948) ウィリアム・メニンガーはアメリカのカンサス出身の精神医学者で、著名なカール・メニンガーの弟である。軍事精神医学にかかわり、第二次大戦中のアメリカ軍の精神医学者…

岩倉遣外使節団と欧米の医療(メモ)

岩倉遣外使節団は、岩倉具視を全権大使として46名からなる使節団をアメリカとヨーロッパに派遣したものである。1871年に日本を出発し、アメリカ―イギリス―ヨーロッパ大陸を回って1873年に帰国した。これを読んでいないことに気付いたので、目次から医療に関…

『アラビアン・ナイト』の性的倒錯(サディズム)について

バートン版『千夜一夜物語』より「バッソラーのハサン」 リチャード・バートンが訳した『千夜一夜物語』は、日本語の完訳がある。大場正史が訳し、シュールレアリストの古澤岩美が挿絵を描いたちくま文庫の11巻本である。その9巻に収録されている「バッソラ…

日本優生学と精神疾患実態調査

「精神疾患実態調査」の論文を書かなければならず、最後のまとめに入っている。議論のポイントは6つ。 1. 国民優生法(1940)の制定とともに、特定地域の精神病患者を悉皆的に診断し、その実数と家系を確定する「実態調査」が20件ほど行われた。(図参照)患…

第一次大戦期ドイツの戦争神経症と「病への意志」

Paul Lerner, Hysterical men : war, psychiatry, and the politics of trauma in Germany, 1890-1930 (Ithaca: Cornell University Press, 2003). 医学史の研究者にとって必読の書物の一つ。第一次大戦時のドイツでは、合計で約20万人の戦争神経症の患者が…

酒井シヅ『病が語る日本史』(東京: 講談社, 2008)

医学史には「疾病の歴史」というアプローチがあり、それぞれの疾患がいつどこでどのように患われ、どう理解されてどう治療・対応されたのかを問う視点である。医学史の研究者にとっては当たり前の発想だが、私自身は日本では科学史を学んだので、イギリスに…