Bert Kaplan eds., The inner world of mental illness : a series of first-person accounts of what it was like (New York: Harper and Row, 1964).
精神医療の歴史には数多くの「アンソロジー」が出版されている。50年前の著作だが、すぐれたアンソロジーを買ったのでメモ。
アンソロジーの中では、Roy Porter ed., The Faber Book of Madness (1991) が多面性を持つ総合的なものとして非常に役に立つ。精神科医が書いたものの抜粋としては、50年前に出版された著作だが、Hunter and Macalpine eds., Three Hundred Years of Psychiatry が圧倒的に優れている。精神疾患の患者自身が書いたものの抜粋は、Dale Peterson ed., Mad People’s History of Madness (1982)が、一つ一つの抜粋がわりと長く取られていて、じっくりと読むことができる。
このアンソロジーは、Bert Kaplan が1964年に編集したもので、予想よりもはるかに面白かった。古典的な著作であるジョン・パーシヴァル(19世紀イギリスの患者運動家)、シュレーバー、セシュエーの患者、クリフォード・ビアースの自伝などから抜粋されているのはもちろん、20世紀の中葉を中心に、精神医学の書物や論文などに掲載されている患者の手記からたくさん採用されている。薬物中毒、てんかん(ドストエフスキー)などの疾病からも取られている。さらに面白いことには、精神疾患の患者の心理を理解するのに助けになるマテリアルがたくさん取られていることである。具体的には、トルストイ、アクグスティヌス『告白』、サルトル『嘔吐』、ニジンスキーの日記などである。こういった著作からの引用は、引用された史料にある読み方を提示することになり、厳密な史料集というコンセプトからは外れるかもしれないが、確かに必要なものである。
アマゾンから中古で買って、さすがにかなりの使用感がある古書だったが、安価に買うことができた。
どうでしょう、精神科医のみなさんも、日本を主題にしてこのようなアンソロジーをまとめになってみては。きっと、「あたる」と思います。