Entries from 2009-04-01 to 1 month
必要があって、一般向けに進化医学を論じた書物を読む。文献は、ランドルフ・M・ネシー、ジョージ・C・ウィリアムズ『病気はなぜ、あるのか―進化医学による新しい理解』長谷川眞理子・長谷川寿一・青木千里訳(東京:新曜社、2001) 進化論を医学に融合して…
必要があって、ギルガメシュ叙事詩を読む。矢島文夫の訳がちくま学芸文庫から出ている。もとはと言えば疫病に関する記述はないかとチェックした本で、疫病については細かい記述はなかったけれども、ライオン、狼、飢饉、洪水とならぶ人類の敵として登場する…
昨日の記事で、ちょっとした訂正があります。 タイトルを「爆発する閉経女性」としましたが、もとの言葉は combustion で、これは瞬時に燃焼するという感じですね。 1800年に、『蒸留酒の長期にわたる悪用による人間の瞬間燃焼について』というフランス語の…
必要があって、更年期の歴史書を読む。文献は、Foxcroft, Louise, Hot Flushes, Cold Science: a History of the Modern Menopause (London: Granta Publication, 2009).この書物は一般向けに書かれた本だけれども、著者はケンブリッジの医学史の博士号を持…
必要があって、ボッカッチョ『デカメロン』の冒頭におかれた1348年のペスト(いわゆる「黒死病」)の記述を読みなおす。柏熊達生訳のちくま文庫。トゥキュディデスと重なる部分がかなりあって(知っていたのかしら?)、疫病に襲われたフィレンツェの悲惨な…
必要があって、トゥキュディデス『戦史』の第二巻にある有名な「アテナイの疫病」の記述を読み直す。村川堅太郎責任編集の中公世界の名著から。ペロポンネソス戦争の最中である紀元前430年の夏に、スパルタなどに包囲されたアテナイに疫病が流行した。その流…
必要があって、福祉国家論の入門書を読む。文献は、クリストファー・ピアソン『曲がり角にきた福祉国家?』(東京:未来社、1996) 昨日記事にした書物を読んだおかげで、すらすらと読むことができた部分が多かった。それに加えて、この書物は学生の試験対策…
必要があって、広井良典『日本の社会保障』(岩波新書、1999)を読む。著者は、数多くの新書と教科書を書いている実力者で、ファンが多く、私もファンの一人である。さらに特殊な必要があって(笑)、「はじめに」と「第一章 福祉国家の生成と展開」をとても…
最近、ボードレール『悪の華』を手元において、ちょっと時間ができた時に読んでいる。阿部良雄訳のちくま文庫の二巻本の『ボードレール全詩集』と、ペンギンの英仏対訳のものを並べて、数編の詩を読む。私のフランス語はもともと初頭文法に毛が生えたくらい…
必要があって、レヴィ=ストロースが未開社会と近代社会の違いを「冷たい社会と熱い社会」という概念で語っている文章を読む。文献は、もとは言えばフランスのTVのインタヴューをおこしたもので、ジョルジェ・シャルボニエ『レヴィ=ストロースとの対話』多…
必要があって、「男性の歴史」の古典を読む。文献は、ジョージ・L・モッセ『男のイメージ―男性性の創造と近代社会』(東京:作品社、2005)ドイツの歴史研究者の泰斗が書いた「男性の歴史」で、堅固な構造体の中に、広範なリサーチに基づく該博な知識を埋め…
インスピレーションを求めて、エンハンスメントの研究書を読む。文献は、Parens, Erik, ed., Enhancing Human Traits: Ethical and Social Implications (Washington DC: Georgetown University Press, 1998).大東亜共栄圏建設論が華やかなりしころ、日本人…
1347年にはじまるヨーロッパのペスト大流行、いわゆる「黒死病」をペストの<第二次>パンデミーというのは、もちろん第一次があるからである。その第一次のパンデミーが6世紀の「ユスティニアヌス期のペスト」と呼ばれているものである。東ローマ帝国の皇帝…
北川正惇(きたがわ・まさあつ)という昭和初期の慶應の医学部(泌尿器科)の教授が、「性的神経症」についてまとまった仕事をしているのをたまたま発見して、医学史研究者の一般教養として、ちょっと仕事を読んでみる。文献は、北川正惇「性的神経衰弱」林…
もうひとつ、林髞の評論集を読む。文献は、林髞『思想と生理』(京都:人文書院、1936)。これは、これまで取り上げたものの中では一番読み応えがある評論が含まれている。特に、冒頭におかれた「思想としての条件反射学」(初出は昭和10年の『改造』とある…
同じく、林髞の評論集を読む。文献は、林髞『科学論策』(東京:厚生閣、1940)文部省の科学行政、中国進出に関する意見、科学戦と日本精神、優生学と断種など、時局にかなった話題に、生理学者としての知見をちりばめながら書いている。どれも面白くて、彼…
必要があって、林髞(はやし・たかし)の評論を読む。文献は、林髞『科学主義・その他』(東京:太陽閣、1937) 林は、1932年から33年にかけてパブロフのもとに学んだ大脳生理学者。本書は、林があちこちに書いた数多くの評論を掲載しているが、生理学と文学…
必要があって、フェルナン・ブローデルがフランスの高等学校(いわゆるリセ)の学生のために書いた歴史の教科書を読む。文献は、フェルナン・ブローデル『文明の文法 世界史講義』松本雅弘訳(東京:みすず書房、1995)高等学校の歴史教科書といっても、日本…
必要があって、九鬼周造『「いき」の構造』を引っ張り出して読む。1930年に雑誌に掲載された有名な作品だけれども、奥付を確認したら、岩波文庫に入ったのは意外に遅く、1979年であるのに少し驚いた。私が持っている本には、1982年と入っていて、その三年で…
同じく新着雑誌から、江戸時代の大阪における堕胎や産科学を論じた論文を読む。文献は、内野花「近世大阪における回生術と産科学」『日本医史学雑誌』55(2009), 31-42. この雑誌の今号は、力作の論文が揃っている。徳川時代の出産と生殖行動は、ジェンダー論…
同じく新着雑誌から、終戦直後の彦根のマラリア撲滅運動を論じた論文を読む。文献は、田中誠二・杉田聡・安藤敬子・丸井英二「風土病マラリアはいかに撲滅されたか―第二次大戦後の滋賀県彦根市」『日本医史学雑誌』55(2009), 15-30. 第二次大戦後に、マラリ…
新着雑誌から、19世紀後半のイギリスにおける地域看護婦と食事指導について論じた論文を読む。文献は、Akiyama, Yuriko, “Cookery, Diet and District Nursing in Late Nineteenth-Century London”, 『日本医史学雑誌』55(2009), 3-13.19世紀後半のイギリス…
新国立劇場で『ワルキューレ』を観て、その無駄話で記事を書きます。前作の『ラインの黄金』で、契約と権勢欲でがんじがらめになってしまった最高神ヴォータンが、呪われた結び目を断ち切って神々を救う望みを「人間」にかける。ヴォータンは、人間の女と交…
必要があって、一般向けにウィルス学を解説した書物を読む。文献は、Crawford, Dorothy H., The Invisible Enemy: A Natural History of Viruses (Oxford: Oxford University Press, 2000).著者はエディンバラ大学の微生物学の先生である。一連のウィルス(…
必要があって、一般向けのウィルス本を読みなおす。文献は、Oldstone, Michael B.A., Viruses, Plagues, and History (Oxford: Oxford University Press, 1998).著者はWHOの麻疹とポリオの撲滅プログラムにも参加していた偉いウィルス学者である。ウィルスに…
必要があって、コレラと革命を論じた古典的な論文を読みなおす。文献は、Evans, Richard J., “Epidemics and Revolutions: Cholera in Nineteenth-Century Europe”, Past and Present, no.120(1988), 123-146.コレラは、ヨーロッパにおいては19世紀の流行病…
必要があって、コレラ流行時の医者のステータスの変化を論じた論文を読み直す。文献は、Durey, Michael, “Medical Elites, the General Practitioner and Patient Power in Britain during the Cholera Epidemic of 1831-32”, in Ian Inkster and Jack Morre…
本当は昨日からですが、新年度が始まりました。 今年度もよろしくお願いします。 必要があって、牧畜・農耕と健康の関係を論じた書物を読み直す。文献は、Cohen, Mark Nathan, Health and the Rise of Civilization (New Haven: Yale University Press, 1989…
必要があって、20世紀前半に一世を風靡した地理学者・気候学者のエルズワース・ハンティントン(Ellsworth Huntington, 1876-1947) の Climate and civilization の翻訳『気候と文明』を読む。翻訳は間崎万理のもので岩波文庫から出ている。もとはといえば、…