ウィルスと歴史

必要があって、一般向けのウィルス本を読みなおす。文献は、Oldstone, Michael B.A., Viruses, Plagues, and History (Oxford: Oxford University Press, 1998).

著者はWHOの麻疹とポリオの撲滅プログラムにも参加していた偉いウィルス学者である。ウィルスについての説明は分かりやすい。前半の、天然痘や黄熱病、麻疹や黄熱病の歴史について書いている部分もエピソードをヴィヴィッドに書いていて、楽しく読むことができる。いかにも翻訳が出されてそうな雰囲気だったけれども、訳されていないらしい。後半は、ラッサ熱、エボラ、ハンタウィルス、BSE、そしてAIDSといった「話題の病気」のコンパクトでリーダブルな説明で、役に立つ。

いい本だけれども、冒頭で、クレイフの『微生物の狩人』のウィルス版を書くのが目標だという宣言はしないほうがいい。この本は、いい意味でも悪い意味でも、目標を達成していないからである。この本の良い部分は、クレイフの一面的でどぎつい偏見から自由だし、また、クレイフの、安物だけれども抗しがたいスリルをかもしだす筆致には遠く及ばない。