Entries from 2008-11-01 to 1 month
未読山の中から、病原体の歴史を一般向けに解説した本を読む。文献は、Crawford, Dorothy H., Deadly Companions: How Microbes Shaped Our History (Oxford: Oxford University Press, 2007).著者は偉い微生物学の先生で、一般向けの書物を何冊も書いている…
出張の移動中に、ギヨーム・ド・ロリス/ジャン・ド・マン『薔薇物語』を読む。篠田勝英の詳細な注と解説が付された訳がちくま文庫から上下二巻で出ている。私が学生の頃は、(たぶん)まだ翻訳がなくて、書物でヨーロッパの中世が論じられるときには何かにつ…
必要があって、奈良時代の薬についての一般向けの書物を読む。文献は、鳥越康義『正倉院薬物の世界-日本の薬の源流を探る』(東京:平凡社、2005)著者は薬学の先生で、昔の生薬や鉱物の記述は、筆に自信があって必要なことを簡潔に書いているが、歴史的な…
しばらく前に読んだ村井玄斎『食道楽』が面白かったので、同じ著者の『酒道楽』を読む。『食道楽』と同じ黒岩比佐子の解説で、岩波文庫版で出ている。二人の主人公が酒が原因で繰り返すしくじりを、家庭ドラマを織り込んでコメディ風に描いた作品。酒の飲み…
必要があって、ハワイへの疾病の侵入を描いた書物を読む。文献は、Bushnell, O.A., The Gifts of Civilization: Germs and Genocide in Hawai’i (Honolulu: University of Hawaii Press, 1993).著者は、ホノルル大学の微生物学の名誉教授でハワイの医学史の…
必要があって、天平の天然痘大流行に関する研究書を読む。この問題に関する最も本格的な研究は、私が知る限りでは英語で書かれたものである。文献は、Farris, William Wayne, Population, Disease, and Land in Early Japan, 645-900 (Cambridge, Mass.: Har…
必要があって、南北アメリカと太平洋地域にヨーロッパ人が進出したときの疾病が与えたインパクトを論じた書物を読む。文献は、Kunitz, Stephen J., Disease and Social Diversity: the European Impact on the Health of Non-Europeans (Oxford: Oxford Univ…
必要があって、『源氏物語』の「若紫」の冒頭に描かれる、光源氏が「わらはやみ」を病む場面を読む。瀬戸内訳で眺めて、岩波の古典大系(古いヴァージョン)でチェックした。瀬戸内訳はこのようになっている。源氏の君は瘧病(わらわやみ)におかかりになり…
今日は純粋な無駄話です。麻生首相が「医者は社会常識が欠如した人が多い」という発言をした後に、謝罪・撤回をして、ちょっと話題になった。色々な意見はあると思うけれども、大筋のところでは、医師会の抗議はもっともで、謝罪に値する軽率な発言だという…
必要があって、美容整形の歴史の本を読む。文献は、Sander L. Gilman, Making the Body Beautiful: a Cultural History of Aethetic Surgery (Princeton, NJ.: Princeton University Press, 1999).著者のサンダー・ギルマンは、身体と医学の歴史研究に画像資…
先日の論文(渡邉富彦「『瘧』の民俗誌―その歴史と民間伝承・民間療法の諸相―」『地域文化論叢』9(2007), 69-95.)で、マラリアを日本で最初に科学的に特定した宮島幹之助について気になったことが書かれていたので、文献を取り寄せて読んでみた。文献は、宮…
必要があって、鎌倉時代の医書から、「瘧」に関する記述を拾っていたら、意外に重要なことが書いてあった。文献は、梶原性全『万安方』石原明解題(東京:科学書院、1986)。梶原性全(1266-1337)は鎌倉時代の医師で、1302年から1304年の間に『頓医抄』を著…
必要があって、江戸時代の「瘧」についての記述を読む。文献は、和田東郭『蕉窓雑話』近世漢方医学書集成15(東京:名著出版会、2001)和田東郭(1743-1803)は京都の医師、近世派と古方派を折衷したいわゆる折衷学派の名医である。彼の談話を書きとめたもの…
必要があって、拒食症の歴史の古典を読み返す。文献は、Brumberg, Joan Jacobs, Fasting Girls: the History of Anorexia Nervosa (New York: Vintage Books, 2000).オリジナルは1988年の出版で、拒食の歴史を描いたものとして、中世の拒食聖人を扱った キャ…
必要があって、マラリア学者による歴史エッセイを読む。文献は、橋本雅一『世界史の中のマラリア―一微生物学者の視点から』(東京:藤原書店、1991)日本語のマラリア関連の論文では必ず参照されているけれども、なぜか目を通すのが遅れた。タイトルと副題が…
必要があって、奈良時代の歴史の教科書を読む。文献は、佐藤信編『日本の時代史4 律令国家と天平文化』(東京:吉川弘文館、2002)。天平9年(737年)にはじまる天然痘の大流行は、古代日本が経験した疫病の中で最もすさまじいものであった。筑紫から侵入し…
土蜘蛛とマラリアで少し興奮したので、何度も読んだ論文をもう一度読む。文献は、Horden, Peregrine, “Disease, Dragons and Saints: The Management of Epidemics in the Dark Ages”, in Terence Ranger and Paul Slack eds., Epidemics and Ideas: Essays …
必要があって、平安時代から室町時代にかけての瘧の治療を論じた論文を読む。文献は、上野勝之「日本古代・中世における疾病認識の変容―瘧病史点描―」『京都大学総合人間学部紀要』9(2002), 99-116. 私の乏しい日本の古代・中世医学史の知識では、平安時代と…
必要があって、瘧(マラリア)の民俗誌を読む。文献は、渡邉富彦「『瘧』の民俗誌―その歴史と民間伝承・民間療法の諸相―」『地域文化論叢』9(2007), 69-95. マラリアといえば沖縄の八重山が有名だけれども、「瘧」と呼ばれた病気は、少なくともある時期には…
必要があって、日本内地のマラリアを研究した古典的な論文を読む。文献は、宮島幹之助「京都付近ニ於ケル『マラリア』ト蚊トノ関係」『中外医事新報』No.547(1903), 1-21; No.548(1903), 17-25; No.549(1903), 11-21.著者の宮島幹之助は1871年に山形県米沢市…
必要があって、医学史の泰斗による、パラケルスス派とそれをめぐる批判を論じた書物を読む。文献は、Pagel, Walter, The Smiling Spleen: Paracelsianism in Storm and Stress (Basel: S. Karger, 1984). パーゲルの一連の書物の中では、以外に一般には知ら…
必要があって、「長い19世紀」のグローバル・ヒストリーを読む。文献は、Bayly, C.A., The Birth of the Modern World 1780-1914 (Oxford: Blackwell Publishing, 2004).「グローバライゼーション」には歴史があることを強調するのが最近の歴史学者たちの間…
必要があって、昨日に続いて、ポール・ファーマーの本を読む。文献は、Farmer, Paul, Pathologies of Power: Health, Human Rights, and the New War on the Poor (Berkeley: University of California Press, 2003). 事例としては、ファーマーがよく知って…
必要があって、ハイチのAIDSと政治的拷問を例にとって、「構造的暴力」を論じた論文を読む。文献は、Farmer, Paul, “On Suffering and Structural Violence: a View from Below”, in, Arthur Kleinman, Veena Das and Margaret Lock eds., Social Suffering …
必要があって、19世紀から20世紀のアメリカにおける母乳保育の衰退を論じた書物を読む。文献は、Wolf, Jacqueline H., Don’t Kill Your Baby: Public Health and the Decline of Breastfeeding in the 19th and 20th Centuries (Columbus, Ohio: The Ohio St…
必要があって、WHOが今年の夏に出した「健康の社会的決定要因に関する報告書」を読む。文献は、Commission on Social Determinats of Health, Closing the Gap in a Generation (Geneva: WHO, 2008). A4で二段組250ページの大著だけれども、国際保健や公衆衛…
必要があって、19世紀後半のロンドンでの「病院」の形成を論じた古典的な研究書を読む。文献は、Ayers, G.M., England’s First State Hospitals and the Metropolitan Asylums Board 1867-1930 (London: Wellcome Institute of the History of Medicine, 197…