Entries from 2010-07-01 to 1 month

説明装置としての狐憑き

未読山の中から、だいぶ前にいただいた論文を読む。文献は、五島敏芳「近世後期の狐憑きと百姓―信州佐久郡五郎兵衛新田村の一事例の紹介から―」『信州農村開発史研究所紀要 水と村の歴史』1381998), 112-137. 信州から江戸にきていた女性の異常行動について…

ジョージIII世の精神病

新着雑誌から。ジョージIII世の精神病の再診断の論文に目を通す。文献は、Peters, Timothy J. and D. Wilkinson, “King George III and Porphyria: a Clinical Re-examination of the Historical Evidence”, History of Psychiatry, 21(2010), 3-19; Peters,…

イスラム医学と症例

同じく新着雑誌から。イスラム医学と症例について論じた論文を読む。テクニカルな資料の話が多かったけれども、たぶん、どの時代・地域の医療と医学を考えるうえでも重要なことを言っている。文献は、Alvarez Millan, Cristina, “The Case History in Mediev…

ぜんそく薬としてのタバコ

新着雑誌から。ぜんそく薬としてのタバコの歴史をたどった論文を読む。文献は、Jackson, Mark, “’Divine Stramonium’: the Rise and Fall of Smoking for Athma”, Medical History, 54(2010), 171-194.ぜんそくで苦しんでいたプルーストが、ストラモニウム (…

「モダニズムと医学図像」 - Michael Sappol 先生セミナー

医学史研究会のお知らせです。アメリカ国立医学図書館の Michael Sappol 先生が、東大駒場で開催される4S学会 (Society for Social Study of Science)にあわせて来日されますが、来日期間中に慶應三田でお話しいただけることになりました。Sappol 先生は、…

18世紀のヨーロッパ概説

必要があって、18世紀ヨーロッパ史の教科書を読む。文献は、T.C. Blanning ed., The Eighteenth-Century (Oxford: Oxford University Press, 2000).授業の予習の時に、医学や病気の歴史を歴史一般にからめるときの「背景」として使っている、Short Oxford Hi…

ジンメル『ショーペンハウアーとニーチェ』

必要があってジンメルのニーチェ論を読む。文献は、ゲオルグ・ジンメル『ジンメル著作集5 ショーペンハウアーとニーチェ』吉村博次訳(東京:白水社、1975)。ニーチェについての尖鋭な批判。ニーチェはキリスト教が持っている「魂の固有価値」の仕掛けを理…

ロンドンの天然痘の衰退

必要があって、19世紀ロンドンの天然痘の衰退を論じた論文を読む。Hardy, Anne, “Smallpox in London: factors in the Decline of the Disease in the Nineteenth Century”, Medical History, 27(1983), 111-138. この重要な論文をまだ読んでいなかった。天…

二つの天然痘

必要があって、ヨーロッパの天然痘についての歴史疫学の傑作の論文を読みなおす。文献は、Carmichael, Ann G. and Arthur M. Silverstein, “Smallpox in Europe before the Seventeenth Century: Virulent Killer or Benign Disease?”, Journal of the Histo…

近世ロンドンの医療と消費

必要があって、近世ロンドンの医療と消費について論じた論文を読む。文献は、Wallis, Patrick, “Consumption, Retailing and Medicine in Early Modern England”, Economic History Review, 61(2008), 26-53. 商業化の進展にともなって、中世の「市」と違っ…

金森修『生政治の哲学』

必要があって、金森修『生政治の哲学』(2009)を読む。 生権力、生政治というフーコーとともに有名になった概念を、現代思想の中により広範に位置づけた書物。アレント、ネグリ、アガンベンなどの現代思想の大物における生政治を概念を取り出し、一方で、それ…

新薬スタチンの発見

必要があって、遠藤章『新薬スタチンの発見―コレステロールに挑む』(東京:岩波書店、2006)を読む。三共製薬時代にアオカビからコレステロール合成を阻害する物質スタチンを発見し、動脈硬化の治療への道筋を切り開いた化学者による研究回顧。新薬開発の裏…

コレステロール研究の100年

必要があって、1985年に動脈硬化の原因となるコレステロールの体内合成のメカニズムについての研究でノーベル賞をとった学者による研究の回顧を読む。文献は、Goldstein, Joseph and Michael S. Brown, “Cholesterol: a Century of Research”, HHMI Bulletin…

動脈硬化のペニシリン

必要があって、「動脈硬化のペニシリン」と呼ばれた新薬「スタチン」のことを調べている。まずは日本人の化学者で最初のスタチンである「コンパクチン」を作った遠藤章の研究回顧談を読む。「動脈硬化のペニシリン”スタチン”の発見と開発―遠藤 章先生に聞く…

デュシャンとモダニズム

必要があって、マルセル・デュシャンの作品批評を通じてモダニズムの文化と社会を論じた書物に目を通す。文献は、Seigel, Jerrold, The Private Worlds of Marcel Duchamp: Desire, Liberation, and the Self in Modern Culture (Berkeley: University of Ca…

社会理論と歴史学

必要があって、社会理論と歴史学について考察をめぐらせた書物を読む。文献は、Sewell, William H., Logics of History: Social Theory and Social Transformation (Chicago: University of Chicago Press, 2005). 一言でいうと、理論を軽視する傾向がある英…

日本の抗生物質

必要があって、日本の抗生物質の開発の回顧録を読む。 文献は、梅澤濱夫「抗生物質を求めて」(1)-(4)『諸君!』1980年1月号282-299; 2月号294-305; 3月号230-244; 4月号296-310.日本の抗生物質開発は、昭和19年の2月にスタートして、その10ヶ月後には、森…

『人物でつづる障害者教育史』

必要があって、精神障害者教育史の入門書を読む。文献は、精神薄弱問題史研究会『人物でつづる障害者教育史 日本編』(東京:日本文化科学社、1988)室町時代から現代まで、障害者の訓練・教育に力があった人物を選んで、その業績をそれぞれ見開き2ページで…

鍼あんま

必要があって、盲人の歴史をチェックする。谷合侑『盲人の歴史』(東京:明石書店、1996)鎌倉時代から、平家物語を琵琶に合わせて語る「平曲」が盲人の職業として確立され独占化された。その後、琵琶語り・平曲自体が衰退したこともあり、戦国時代・江戸時…

アメリカのフリークス

必要があって、アメリカのフリークス研究を読む。文献は、Adams, Rachel, Sideshow U.S.A.: Freaks and the American Cultural Imagination (Chicago: University of Chicago Press, 2001).フリークス研究は、アメリカを中心に盛んになっていたことは聞いて…

『<母と子>の民俗史』

必要があって、学生時代に読んだ本をひっぱりだしてきて再読する。文献は、フランソワーズ・ルークス『<母と子>の民俗史』福井憲彦訳(東京:新評論、1983)ポイントを二つ。最初が、身体の象徴がもっとも鮮明である出産と子育てという領域という問題。<…

吉田兼好『徒然草』

必要があって『徒然草』を読む。佐藤春夫の訳が味わい深く、必要でない部分も読んでしまった。兼好が生きた13-14世紀は中国医学の黄金時代にあたり、中国医学はまさに(東洋の)グローバルスタンダードを形成していた。出版・印刷によって正確な医学知…

医学統計の形成

必要があって、18世紀の医学統計の形成を論じた書物を読む。文献は、Rusnock, Andrea, Vital Accounts: Quantifying Health and Population in Eighteenth-Century England and France (Cambridge: Cambrdige University Press, 2002) 19世紀には政府が作っ…

ドイツの性病病院

初期近代のドイツにおける性病病院の歴史を研究した論文を読む。文献は、Juette, Robert, “Syphilis and Confinement: Hospitals in Early Modern Germany”, Norbert Finzsh and Robert Juette eds., Institutions of Confinement: Hospitals, Asylums and P…

ドイツの「大学医学」の成立

必要があって、ドイツの大学での「科学研究」の起源を論じた古典的な論文を読む。文献は、Turner, R. Steven, “The Growth of Professorial Research in Prussia, 1818-1848 – Causes and Context”, Historical Studies in Physical Sciences, 3(1971), 137-…

フランス旧制度下の病院

必要があって、アンシャン・レジームのフランスの病院を論じた論文を読む。文献は、Jones, Colin, “The Construction of the Hospital Patients in Early Modern France”, in Norbert Finzsh and Robert Juette eds., Institutions of Confinement: Hospital…

『ポンペ日本滞在見聞記』

必要があって、幕末日本に医学を教えてポンペの記録を読みなおす。文献は、『ポンペ日本滞在見聞記』沼田次郎・荒瀬進共訳(雄松堂出版、1968)ポンペは長崎で生理学や病理学などを教えた。有名な解剖学実習は1859年に行われた。そのあと、ポンペは薬理を教…

戦後精神医学の研究論文

新着雑誌『Core Ethics 』から、戦後日本の精神科の歴史についての研究を二点。文献は、仲アサヨ「精神科特例をめぐる歴史的背景と問題点―精神科特例の成立および改正の議論から」Core Ethics, 6(2010), 277-286.; 松枝亜希子「トランキライザーの流行-市販…

ACT(包括型地域生活支援)

必要があって、「包括型地域生活支援」(assertive community treatment)の実践と理念についての書物を読む。文献は、高木俊介『ACT-Kの挑戦 ACTが開く精神医療・福祉の世界』(東京:批評社、2008)ACTとは、統合失調症を中心にした重い精神障害者に対する24…

後藤新平

必要があって、後藤新平の一般向け衛生講演を読む。文献は、後藤新平「至高の財産」『埼玉衛生雑誌』48号(1888), 1-15 明治21年11月18日に児玉郡本庄宿安養院にて大日本私立衛生会埼玉支部の常会で、後藤新平が講演をしたものの筆記録。一般の聴衆に向かっ…