Entries from 2014-08-01 to 1 month
谷崎潤一郎の短編「美男」は大正5年9月の『新潮』に発表された。ほぼ同時期の「亡友」と同じ、若き日の友人を記述するという形式である。「亡友」も性欲が主題であるが、「美男」も、女にもてるだらしない人物を記述している。「亡友」も面白いが、「美男」…
谷崎潤一郎「病蓐の幻想」からメモ。大正5年(1916)の11月の『中央公論』に発表した短編で、全集の第4巻に入っている。とても面白い作品で、精神医学史の研究者は読んでおくべきである。また、後半は地震を不安に思う心理について、とても面白い記述がある。…
アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』And Then There Were None (1939) アガサ・クリスティ『ポケットにライ麦を』A Pocket Full of Rye (1953) 推理小説と精神医学の関係はとても深い。エラリー・クイーン『Yの悲劇』、ヴァン・ダイン『グリーン家…
『正木不如丘作品集』全7巻(1967)の中から。 著作集の第2巻におさめられている「医学部教室展望」が面白い。「グレタ・ガルポ」というあだ名を付けられたとびきりの美人記者が、医学部の教室を次々と訪れるという設定の話である。連続ドラマや連載漫画にぴっ…
石原純『恋愛の史的考察』性科学全集第10篇(東京:武侠社、1931) 阿部定が愛人の男性を絞殺して性器を切り取る事件が1936年の5月に起きた。英語の書物では、William Johnston 先生の最近の著作 Geisha, Harlot, Strangler, Star: A Woman, Sex, and Morali…
『正木不如丘作品集』全7巻(1967)に目を通す。とても面白い作品が多くて、本来探しているものではないのに、つい読みふけってしまう。解説などが全くないので、その作品がいつ書かれたかということが分からないが、「実験動物供養」という戦後に書かれた作品…
木々高太郎『木々高太郎著作集』全6巻(東京:朝日新聞社、1970) 木々高太郎(きぎ たかたろう)は、本名を林髞(はやし たかし)といい、慶應医学部の生理学の教授である。1897年生、1969年没。ソ連に留学してパブロフのもとで研究した。ソ連の精神科学の…
Ferngren, Gary B., Medicine and Health Care in Early Christianity (Baltimore: The Johns Hopkins University Press, 2009). 古代ギリシア・ローマの医学と、初期キリスト教徒の社会との関係を論じた書物である。専門でないから正確に誰それのこのモデル…
話題の医学史画集である The Sick Rose に目を通す。文献はRichard Barnett, The Sick Rose: Or, Disease and the Art of Medical Illustration (New York: D.A.P., 2014). 疾病ごとにインパクトがある図像を集めて簡潔な説明を付けた画集。これまでもよく分…
三遊亭円朝の「怪談乳房榎」を読む。文献は三遊亭円朝『怪談牡丹燈籠 ; 怪談乳房榎』(東京:筑摩書房, 1998) 円朝は幕末から明治期にかけての落語家で、医学史では『真景累ヶ淵』で知られている。これは江戸期から存在した幽霊の女性である累の話と、幕末…
Reiss, Benjamin, Theatres of Madness: Insane Asylums and Nineteenth-Century American Culture (Chicago: The University of Chicago Press, 2008). 医療の社会史の中にも、社会科学の方法を取って患者の人口動態などを明らかにする手法もあるし、文化や…
能の傑作の一つである「卒都婆小町」を読む。観阿弥作で、老女物・憑霊物の作品。<日本古典文學大系>の40巻にあたる、横道萬里雄・表章校注『謡曲集 上』(東京:岩波書店、1960)、81-88. 小野小町が老醜の乞食となったのがシテ、旅の僧がワキ。前半は老…