Entries from 2009-09-01 to 1 month
しばらく前の『道具づくし』と同じ趣向の、別役実のドライなユーモアで、彼自身を含めて現象学系のペダントリーの鋭利なパロディになっているエッセイ集。これも大いに楽しんで、笑いながら読んだ。これが笑えるということは、私自身もこのパロディの対象に…
必要があって、フランツ・ファノンを読む。文献は、ファノン『地に呪われたる者』鈴木道彦・浦野衣子訳(東京:みすず書房、2008) 特に第五章「植民地戦争と精神障害」は精神医学とポストコロニアリズムを論じた古典中の古典で必読文献。本当に恥ずかしい話…
今日は無駄話。音楽はあまり聴かないから、なかなか好きな音楽のレパートリーが広がらない。これは、私が一番よく聴くのがオペラだということと関係があるのかもしれない。オペラというのは、一握りの作品が何度も繰り返して上演される、クラシック音楽の中…
必要があって、AIDSの概説書を読む。文献は、Barnett, Tony and Alan Whiteside, AIDS in the Twenty-First Century: Disease and Civilization, 2nd edition (Basingstoke, Hampshire: Macmillan, 2006).目を通すのが遅れたけれども、さすがに第二版がすぐ…
必要があって、AIDSの疫学を一般向けに語った書物を読む。文献は、Pisani, Elizabeth, The Wisdom of Whores: Bureaucracies, Brothels and the Business of AIDS (New York: W.W. Norton & Company, 2008).著者はジャーナリストを経て、ロンドンで疫学を学…
必要があって、AIDS対策の国際比較制度史の書物を読む。文献は、Baldwin, Peter, Disease and Democracy: the Industrialized World Faces AIDS (Berkeley: University of California Press, 2005). 同じ著者が2000年に上梓した Contagion and the State と…
必要があって、アリス・ウォーカーの小説、『喜びの秘密』柳沢由美子訳(東京:集英社、1995)を読む。原作が出版されたのは1992年で、当時アフリカ諸国で行われていた「女性性器切除」を告発する文脈で書かれた小説である。こういう「政治的に明確な主張」…
必要があって、戦争と疫病についての古典を読む。文献は、Prinzing, Friedrich, Epidemics Resulting from Wars, ed. by Harald Westergaard (Oxford: Clarendon Press, 1916) ドイツの疫学、医療統計の泰斗が膨大な資料に基づいて書いたこの書物は、1916年…
必要があって、18世紀イギリス史の概説書を読む。文献は、Langford, Paul, A Polite and Commercial People. England 1727-1783 (Oxford University Press, 1992)New Oxford History of England のシリーズで、刊行された順序でいうとシリーズの第一巻で、な…
必要があって、18世紀イギリス社会を論じた教科書を読みなおす。Hay, Douglas and Nocholas Rogers, Eighteenth-Century English Society (Oxford: Oxford University Press, 1997). 著者の一人はE.P. トムソンと一緒に出した、18世紀のイギリスの犯罪の歴…
必要はまったくなかったけれども、昔が懐かしくなって、別役実『道具づくし』(東京:早川書房、2001)を読む。 今日は無駄話です。私が大学に入ったのは30年近く前だけれども、そのころは、学生演劇が大いに盛り上がっていた。キャンパスに立っている「立て…
必要があって、『針聞書』に現れる「ムシ」の解説書を読む。文献は、長野仁・東昇『戦国時代のハラノムシ―「針聞書」のゆかいな病魔たち』(東京:国書刊行会、2007)書籍の帯に「スタマック・モンスター(略してスタ・モン)大集合!」とか書かれていたので…
必要があって、中世日本の「餓鬼草紙」を分析した論文を読む。文献は、LaFleur, William R., “Hungry Ghosts and Hungry People: Somacitity and Rationality in Medieval Japan”, in Michael Feher, Ramona Naddaff and Nadia Tazi eds., Fragments for a H…
必要があって、20世紀初頭に書かれた「病気とは何か」ということについての論文を読む。文献は、Crookshank, F.G., “The Importance of a Theory of Signs and a Critique of Language in the Study of Medicine”, in C.K. Ogden and I.A. Richards, The Mea…
休暇先で、山田風太郎『八犬伝』を読む。廣済堂文庫という、ミステリーや時代小説を出している文庫から出ている。怪談や伝奇小説を読みたくなって、『八犬伝』のいろいろなヴァージョンを探していたときに、山田風太郎の『八犬伝』があることを知る。忍者小…
必要があって、精神病院の統計学の古典を読み直す。文献は、Jarvis, Edward, Insanity and Idiocy in Massachusetts: Report of the Commission of Lunacy, 1855, with a critical introduction by Gerald N. Grob (Cambridge, Mass.: Harvard University Pr…
必要があって、古代・中世の医療の社会史研究の第一人者の書物を読み返す。文献は、新村拓『死と病と看護の社会史』(東京:法政大学出版局、1989)現代の医療倫理の問題とやや強引に結び付けようとしている部分もあるけれども、広範な資料から問題の本質を…
江戸時代の介護についての論文を読む。文献は、柳谷慶子「近世家族における扶養と介護―「仙台孝義録」の分析から―」渡辺信夫編『近世日本の民衆文化と政治』(東京:河出書房新社、1992)、119-140.近世家族においては、家族内の弱者を経済的に扶養し、身体…
必要があって、中山茂が洋学の論文集に付した短い序章を読む。文献は、中山茂「序章」中山茂編『幕末の洋学』(京都:ミネルヴァ書房、1984)、1-14. 著者は、身分的には不遇だったことで有名な科学史研究者だけど、書くものには割りと良いものが多いと私は…
必要があって、中世医学史の研究者の論文集を読む。文献は、Horden, Peregrine, Hospitals and Healing from Antiquity to the Later Middle Ages (Aldershot: Ashgate Publishing Company, 2008).これは、Ashgate というイギリスの科学史に強い出版社が出し…
必要があって、トマス・マンの『ヴェニスに死す』を読む。何度も読んでいるけれども、読むところはだいたい決まっていて、コレラに関係する箇所ばかりなのがちょっと悲しい。有名な―といっても、医学史家の間で有名な、という意味だけれども、コレラの消毒の…
必要があって、19世紀の医学における「膜」のメタファーを分析した書物を読む。文献は、Otis, Laura, Membranes: Metaphors of Invasion in Nineteenth-Century Literature, Science, and Politics (Baltimore: Johns Hopkins University Press, 1999).現代…
必要があって、砂原茂一『医者と患者と病院と』(東京:岩波新書、1983)を読む。実は、これは本当に恥を忍んで告白しなければならない事だが、私は、この好著を読んだ事がなかったどころか、その存在すら知らなかった。著者が書いた結核学の歴史についての…
必要があって、ナラティヴ医学の標準的な教科書を読む。文献は、Charon, Rita, Narrative Medicine: Honoring the Stories of Illness (Oxford: Oxford University Press, 2006). 著者は、この20年ほど、「文学と医学」といわれる学際的な領域を牽引してきた…
今日は、無駄話をする。古いTLS(15 May 2009)に目を通していて、Stephanie Budin という学者が書いた本 (The Myth of Sacred Prostitution in Antiquity, Cambrdige University Press, 2008) の書評が目にとまった。これは、いわゆる「バビロンの処女市」…
夏の夜は日本の古典的な怪談が恋しくなるから、上田秋成の『雨月物語・春雨物語』を現代語訳で読んだ。石川淳が訳しているちくま文庫版。さすが、プロの文学者の訳だけあって、現代語訳の文体を使い分けている。『雨月物語』では、絢爛豪華で夢幻的に折り重…
必要があって、19世紀ドイツの人体モデルの製作者の優れた研究を読む。文献は、Hopwood, Nick, “Artist versus Anatomist, Models against Dissection: Paul Seiller of Munich and the Revolution of 1848”, Medical History\, 51(2007), 279-308. 医学教育…
必要があって、明治19年の山口県のコレラについて、同時代に感染経路を復元しようとした面白い資料を紹介した論文を読む。文献は、木下繁太郎「豊浦郡矢玉浦虎列刺病概表―明治19年のコレラ流行」『医学史研究』no.42(1974), 559-573.明治19年は、全国で10万…
必要があって、日本の精神分析の黎明期の歴史に触れた論文を読み直す。文献は、 Blowers, Geoffrey H. and Serena Yang Hsueh Chi, “Freud’s Deshi: the Coming of Psychoanalysis to Japan”, Journal of the History of the Behavioral Sciences, 33, no.2(…