Entries from 2017-12-01 to 1 month

『十二支考』「犬」へーよいお年をお迎えください

原稿の初稿を皆さまに送る仕事が終わり、今年の仕事をおしまいにします。今年は、色々な新しい仕事が出来ました。これからしばらく『十二支考』の「犬」の項目を読みながら、年の瀬に何かをつまみながらお蕎麦をいただきます。皆さま、よいお年をお迎えくだ…

ロンドン衛生熱帯医学校の校章について

Wilkinson, Lise, and Anne Hardy. Prevention and Cure : The London School of Hygiene & Tropical Medicine : A 20th Century Quest for Global Public Health. Kegan Paul, 2001. ロンドン衛生熱帯医学校に関するモノグラフにもう一度ざっと目を通す。ふ…

エコノミストより:親が子供と過ごす時間が長くなったことーただしフランスを除く(笑)

www.economist.com 11の富裕な国を選び、1965年と2012年における親が子供と過ごした時間の調査。全体だともちろん長くなっていて、一日54分から104分と、ほぼ2倍になった。男性はまだ短いが劇的に伸び、大卒の方が長いがそれ以外でも伸びている。 ただ一つの…

洞窟の空気が体に良い結核用サナトリウム 1900年アメリカ

www.atlasobscura.com 1900年アメリカ。地下洞窟の空気を吸い上げる結核用サナトリウムの建設。ホプキンスの医師が最近測定して、ホプキンスを含めて各地よりも細菌が非常に少ないことを発見した。詳細はサイトを。

『フィールド図鑑日本の野鳥』に関するとてもよいニュースを2つ

バードウオッチングでは日本野鳥の会の『フィールドガイド日本の野鳥』の増補改訂版を使っている。必須のレファレンスだけど、定価3,600円+税だから結構高い。もともと趣味はお金が掛かるものだから、仕方ないし、そういうものだ。実際、素晴らしいガイドで…

「女性とコレクション」雑誌特集号論文の公募

私は医学史の研究者で、扱っている時代が色々と合わせても初期近代から20世紀中葉頃までである。医師に注目するとどうしても男性ばかりになる。看護人は女性の看護婦が多いが、まだきちんと研究したことはない。女性がたくさん存在して研究のマテリアルが潤…

パンデミックのSF小説

来年に一つパンデミックに関する論文を書ければいいと思っている。もちろんまだ研究の状況が分かっていない。パンデミックのゲームという新しいマテリアルが重要なピースだけれども、その話まで持っていけるかどうか分からないし、そもそもパンデミックを主…

アメリカの医学史とイギリスの新しい医学史

イギリスの新しい医学史、特に新しい精神医学史の発展についての文章を書いた。これは1920年に創設された慶應の医学部の創設100年を記念して『近代日本研究』で組まれる特集に寄せたものである。本来なら、慶應の医学部の歴史や、そこでの医学史の教育などに…

心理学の実験 - 不眠記録の達成

https://en.wikipedia.org/wiki/Randy_Gardner_(record_holder) Quora Digest で読んだ話。1965年にアメリカの17才の高校生男子が11日間(264時間)一睡もしなかったという記録を打ち立てたという記事。これは心理学の研究者などによって科学的に測定されな…

鳥のはばたきの軌跡

http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/gallery/121900080/index.html?P=2 来年のナショジオは一年間を通して鳥の特集とのこと。少なくとも最初の号は買おうかなとかなり迷う。最初の企画が一級品で、鳥が空をはばたく軌跡を再現しようというものである。蛇が砂…

医師勤務環境のデータなど

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03253_01 http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000097847.pdf 週刊医学界新聞の最新号が「医療勤務環境の自主改革」という大きな記…

カカオとココアとチョコレート

Davidson, Alan, Tom Jaine, Jane Davidson, Helen Saberi, and Soun Vannithone. The Oxford Companion to Food. 2nd ed. / edited by Tom Jaine ed.: Oxford University Press, 2006. Alan Davidson の Oxford Companion to Food は、世界中の食材を取り上…

メリー・クリスマスとよいお年を / I wish you a Merry Christmas and a Happy New Year

みなさま、今年もお世話になりました。メリー・クリスマスとよいお年をお過ごしくださいませ。新規事業のサンタに精神医学的な詰問をされないように、来年は少なく望んでそれを確実に仕上げるようにいたします! I wish you a merry Christmas and a happy N…

感染症かるた―黄熱病はなぜ「う」なのか

しばらく前に出したクイズ。感染症かるたの「黄熱病」は、絵が野口英世で取り字は「う」になっている。それはなぜか。正解を解説します。 黄熱病と聞いて野口英世の名前を思い出すのは日本だけである。野口の黄熱病の病原体発見はそもそも失敗したし、それも…

19世紀イギリスの「奇人」James Lucas と『ジェイン・エア』のロチェスター夫人

http://www.oxforddnb.com/view/10.1093/ref:odnb/9780198614128.001.0001/odnb-9780198614128-e-17131 今日の Oxford DNB は James Lucas (1813-1874). DNB で時々出てきて愛読されている「変な有名人」である。エントリーの職業項目は eccentric だから、…

魯迅の階段教室と慶應医学部の写真展

http://www2.archives.tohoku.ac.jp/luxun/1_5_luxun.html VISA カードの会員誌の仙台の紹介記事に「魯迅の階段教室」が掲載されていた。これは「藤野先生」にも登場する有名な仙台医学校の医学教室で、魯迅が1年と少し仙台で医学を学んだ時の印象的な教室。…

精神分裂病と薬物療法 秋元実践精神医学講義

秋元, 波留夫. 実践精神医学講義. 日本文化科学社, 2002. 東大精神科の教授であった秋元の書物。精神医学講義と銘打っているが、実際に講義として使われた書物かどうかは分からない。もともと秋元が教職を退いてから書籍化された書物でもあるし、また日本の…

フェミニズムと性の商品化の議論

http://www.huffingtonpost.jp/2017/04/29/idol-and-lgbt_n_16330256.html 中村, 香住. "フェミニズムを生活者の手に取り戻すために ─「性の商品化」に対する現代女性の「気分」の分析を通して." 新社会学研究, no. 2 (2017): 176-95. 私は慶應日吉で長沖先…

感染症かるたークイズ付きです!

『感染症かるた』をアマゾンで買って、一人でしばらく絵を観たり札の字句を読んだりして、まず原理を理解しようとしていた。カルタを本気で作ったことなどないが、とてもよくできた作品だと思う。 過去と現在のさまざまな感染症に関する知識が、カルタの札の…

永井隆「原子爆弾救護報告書」

今日の大学院の授業で素晴らしいテキストを読むことができた。訪問研究員で来年度から国立シンガポール大学で教職に就く秀才のシーリン・ローさん Shi Lin Loh が選んでくださったものである。 テキストは、永井隆「原子爆弾救護報告書」である。ローさんに…

医療の歴史の名場面の写真集

Hansen, Bert. "Medical History’s Moment in Art Photography (1920 to 1950): How Lejaren Hiller and Valentino Sarra Created a Fashion for Scenes of Early Surgery." Journal of the History of Medicine and Allied Science 72, no. 4 (2017): 381-4…

医学と歴史を両方勉強する仕組み

医学史の研究動向に関する論文を大急ぎで書いている。明日には仕上がって原稿を送ることができる。主題はイギリスの医学史の発展で、それを振り返りながら、これからの日本で医学史はどうなるのだろうとやはり考えてしまう。その中で考えがまとまった部分が…

ミルトン『失楽園』

大学院生とミルトンの『失楽園』の最後の部分について話していて、暗唱できなくなっていたことが分かったので、Evernote に書き写し、ブログにも書いておく。少なくとも、with wandering steps and slow の部分は出てくるようにする。以上、誓いました(笑)…

医療のリスクについて

磯野真穂、上田みどり. "心房細動の抗血栓療法における不確実性―人文・社会科学の立場から." Medical Science Digest 42, no. 11 (2016): 509-13. 先日の京都のワークショップでお会いした磯野先生に論文を頂いた。医療におけるリスクが、医療者と患者にとっ…

医療のリスクについて

磯野真穂、上田みどり. "心房細動の抗血栓療法における不確実性―人文・社会科学の立場から." Medical Science Digest 42, no. 11 (2016): 509-13. 先日の京都のワークショップでお会いした磯野先生に論文を頂いた。医療におけるリスクが、医療者と患者にとっ…

『医療人文学』最新号ー特集「恥・スティグマ・医療」

Current Issue | Medical Humanities イギリスのBMJ の Medical Humanities の最新号が「恥・スティグマ・医療」の特集号です。ある病気にかかったことを恥と思いスティグマととらえる現象、ちょうど知りたいところでした。今回は特集記事も多く、目を通すこ…

明治期末の会社組織の病院

同じく京都医事衛生誌の明治43年10月発行の199号の記事に、大阪と京都に会社組織の病院ができたというニュース。 まずは、神戸―大阪に合資会社組織の病院が設立されたというニュース。これは高橋眼病院という。病院と言えばこの時期は官公立か一私人の設立だ…

京都医科大学新入学生・高校別合格者数 明治43年

たまたま読んでいた明治43年10月の『京都医事衛生誌』に京都医科大学新入学生の、旧制高校別の合格者数があって、よく分からないので、とりあえずメモしておく。 東大の学生は、単位を普通に取っていくと駒場から本郷に行くから、私は一高と東京帝大は実質上…

中世イタリアにおける解剖用の刑死体

13世紀末から14世紀中葉にかけて活躍した画家にピエトロ・ロレンツェティという人物がいる。彼がアッシジの聖フランシスコ教会のバジリカにフレスコを描き、その中で、首を吊って自殺したユダを描いている。身体は歪んで下方に引っ張られたようになり、下腹…