ロンドン衛生熱帯医学校の校章について

Wilkinson, Lise, and Anne Hardy. Prevention and Cure : The London School of Hygiene & Tropical Medicine : A  20th Century Quest for Global Public Health. Kegan Paul, 2001.
 
ロンドン衛生熱帯医学校に関するモノグラフにもう一度ざっと目を通す。ふと気がついたのがその校章である。これは古代のコインから20世紀にデザインされたものとのこと。コインは466BCEにシチリアで鋳造されたものが原型である。
1929年に正面玄関につくられたものは、医学の神であるアポローンとその妹のアルテミスが二頭立ての馬車に乗り、アポロンは弓を射ている。背景にはヤシの木が描かれ、これはもちろん熱帯の象徴であるが、ギリシア神話にも起源があり、アポローンとアルテミスの母親のレートーが出産した時に、そこにヤシの木が生えて葉を茂らせて出産を安楽にしたという。それをモダニズムのタッチで表現している。玄関の上には左右いずれも蚊の彫像があり、熱帯医学らしさが出ている。
 
 
この入り口のデザインが、1990年代に現在の校章にデザインされなおした。こちらの方が古典古代風の感じが出ている。地面には、杖に蛇が絡まったものが描かれている。これはアポローンの子で医神のアスクレピウスが持つ医療の象徴である。
 

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