Entries from 2006-06-01 to 1 month
19世紀から20世紀のポーランドにおける臨床医学の哲学の論客たちの論集を集めた便利な論文集を読む。文献は Ilana Löwy ed., The Polish School of Philosophy of Medicine (Dordrecht: Kluwer Academic Publishers, 1990). ヒポクラテスは遍歴医者たちの親…
世紀末ドイツの作家、オスカー・パニッツァの簡単な伝記を読む。文献はBrown, Peter D.G., Oskar Panizza: His Life and Works (Berne: Peter Lang, 1983). オスカー・パニッツァは1853年に生まれ1921年に没した作家である。ギムナジウムに入学するが歌手に…
メチニコフが食細胞理論と進化論とを融合させた重要な論文を読む。 Metchnikoff, Elie, “The Struggle for Existence between Parts of the Animal Organism”, in The Evolutionary Biology Papers of Elie Metchnikoff (Dordrecht: Kluwer Academic Press, …
メチニコフ (Eli Metchnikoff, 1845-1916) の食細胞理論に始まる免疫学の思想史を読む。文献はTauber, Alfred I., The Immune Self: Theory or Metaphor? (Cambridge: Cambridge University Press, 1994) この著者にはチェルニャックと共著のMetchnikoff and…
疾病地図学の歴史の研究書を読む。 文献は Koch, Tom, Cartographies of Disease: Maps, Mapping and Medicine (New York: Esri Press, 2005). 疾病地図といえば、ロンドンのジョン・スノウのコレラ地図が有名である。1849年のコレラの流行において、ソーホ…
週末に京都で仕事があって、しばらくお休みをいただきました。 しばらく前に書いた、家庭薬の話にコメントがたくさんあった。 やはり人気がある。 というわけで、今日はコメントにあった幾つかの薬について、手元にある書物から簡単な紹介を。 宗田一『日本…
近世の「ねずみ文学」を読む。 文献は「猫のさうし」『御伽草子』市戸貞次校訂・日本古典文学体系38(東京:岩波書店、1958)297-311。 慶長7年に、京都で猫の綱をとき、猫の売り買い停止するお触れがでた。これは現実の話である。これを踏まえて、ネズミが…
柳田国男「鼠の浄土」を読む。文献は柳田国男「鼠の浄土」『海上の道』(東京:岩波文庫、1978)所収。 鼠の被害がおびただしいため、人間が居住を放棄し、あるいは近づきすらしない島があること。大量発生した鼠が海を渡ること。沖縄や奄美大島では鼠を神格…
近代初期のイギリスのペストについての研究書を読む。文献はSlack, Paul, The Impact of Plague in Tudor and Stuart England (Oxford: Clarendon Press, 1985). ペストについてのリサーチが一通り終わって、アイデアを探しながら議論を組み立てるフェーズに…
病気と帝国主義のビッグ・ブックを読む。文献は Sheldon Watts, Epidemics and History: Disease, Power and Imperialism (New Haven: Yale University Press, 1997). 流行病の歴史は、幾つもの大陸にまたがって1000年くらいをカヴァーするビッグ・グローバ…
大の親日家で、温泉と銀座の並木通りをこよなく愛する科学史家、ベルリンのマックス・プランク研究所科学史部門の上級研究員のフェルナンド・ヴィダルが、18世紀の心理学の歴史についての新しい本を出版しました。 以下の通りです。 Fernando VidalInstitut …
16世紀から17世紀の「感染症の文学」を研究した傑作を読んでいたら、目からうろこが落ちるような指摘があった。文献はMargaret Healy, Fictions of disease in early modern England : bodies, plagues and politics (Houndmills: Palgrave, 2001). 彼女のデ…
今日は画像の紹介で軽い話を。 インドにも中国にも「天然痘の女神」が存在する。 天然痘にすると同時に、それを癒し、それから守る女神だそうである。 両者はとても似ているが、図像学的にはインドの方が旧いそうで、インドの神様が中国に渡来したことの証拠…
18世紀末から20世紀初頭にかけてのチュニジアにおいて、流行病の歴史と植民地化との関係を論じた書物を読む。文献はGallagher, Nancy Edward, Medicine and Power in Tunisia 1780-1900 (Cambridge: Cambridge University Press, 1983). 西ヨーロッパ最後の…
ペストが身体文化とその統治に与えた文化的影響を論じた書物を読む。文献は Hatty, Suzanne E. and James Hatty, The Disordered Body: Epidemic Disease and Cultural Transformation (New York: State University of New York Press, 1999) ペストは、14世…
しばらく前にたくさん借り出した辻潤についての本で、読み残しがあったので目を通してみた。文献は折原脩三『辻まこと・父親辻潤』(東京:平凡社、2001); 松原邦之助編『ニヒリスト辻潤の思想と生涯』(東京:オリオン出版、1967) 辻潤の調べをぼつぼつと…
ネズミの話が続く。文献は宇田川竜男『ネズミ 恐るべき害と生態』(東京:中公新書、1965) ハーメルンの笛吹き男ではないが、日本でも各地でネズミの大発生が繰り返されてきた。この本で紹介されている話の中では、富士宮市の富士山山麓で、1841年、1902、1…
今日もHPの紹介を。 現在のホットな話題を「話しの枕」に持ってきて、自分の研究に現代的な意義があるようにお手軽に見せかける(笑)のは私たちの常套手段である。陳腐なことは承知しているが、授業などでは時々やってしまう。そういうとき、良い話題はな…
ひきづづきペストのリサーチの関係で、ネズミ関連本を読み漁る。 文献は、斉藤隆『森のねずみの生態学 - 個体数変動の謎を探る』(京都:京都大学出版会、2002);矢部辰男『昔のねずみと今のねずみ』(東京:どうぶつ社、1988);戸川幸夫『イヌ・ネコ・ネズ…
低人さんのコメントにあった「正露丸」もそうだが、日本ではロングセラーの薬がたくさんある。というわけで、今日も雑談を。 家庭薬、売薬、日本での呼び方にいろいろあるが、私たちの間では OTC (Over-the-Counter) Drug などと呼ばれている薬がある。 医師…
ペスト漬けの日が続く。流行記事や昔の論文を読み、表を作り、地図を描く。その合間に、ネズミの本やノミの本を読む。その中で、ペストとは関係ないが、ある本を読んでいて、目に留まった面白い言い伝えがあった。文献は長谷川恩『ネズミと日本人』(東京:…
ここ数日色々な用があって、ブログの更新が滞りました。 すぐに復帰します。 というわけで(笑)、今日はウェッブリソースの紹介。 イギリスのウェルカム図書館や、アメリカのNLM (National Library of Medicine ) のような、巨大な医学史のサイトは、日本に…
今日は終日、三重のペストの伝播の分析をしていて、ブログで紹介するような文献を読めなかったので、適当なことを書きます。 先日、イギリスのロイヤル・アカデミー友の会の雑誌をめくっていて、ダミアン・ハーストの作品でNYにある Virgin mother の彫刻…
日本のペストの疫学に関する古典的な研究を読む。文献は、飯村保三『日本ニ於ケル「ペスト」ノ疫学ニ関スル総合的研究』(東京:内務省衛生局、1929) ペストに関して言えば日本はラッキーな国だった。13世紀以来、ユーラシアを席巻した第二回の世界的流行、…