Entries from 2007-06-01 to 1 month
必要があって火野葦平『糞尿譚』を読む。 昭和12年下半期の芥川賞を受賞し、筆者の出世作になった作品。九州のある町(解説によると若松だそうだ)の落ちぶれた家に生まれた男が、財産を担保にして汲み取り業をはじめる。トラックを買い込んで、それでし尿を…
必要があって、「地下都市」の文化史の話題の研究書を読む。文献は、Pike, David L., Subterranean Cities: the World Beneath Paris and London 1800-1945 (Ithaca, New York: Cornell University Press, 2005). 東京の地下鉄サリン事件と、村上春樹の『世…
必要があって江戸・東京の水に関する大著を読む。文献は、鈴木理生『江戸・東京の川と水辺の辞典』(東京:柏書房、2003) 筆者は人文地理学者で、発想が一々目新しくて面白い。私が今回特に気合を入れて読んだのは下水処理を論じた箇所である。江戸では糞尿…
必要があって鈴木光司の三部作を読む。『リング』『らせん』『ループ』の三冊。何となく名前は聞いたことがあったけれども、読むのは初めて。映画もあったことは知っていたけれども、例のごとく一作も観たことはない。以下はネタバレがあります。 話はかなり…
必要があって、明治の東京にあった「水の風景」を書いた随筆を読む。文献は鏑木清方『明治の東京』山田肇編(東京:岩波文庫、1989)。同『こしかたの記』(東京:中央公論社、1961) 鏑木清方が描く江戸情緒をたたえた日本画が、そのまま随筆になったような…
もうひとつ、同じ叢書から、ダンスホールの周辺についての雑文の中に、面白い一節があったので。文献は、多田道夫『ダンサーとズロース』(東京:三興社、1931) ダンスホールのダンサーたちの生態を、楽屋裏だとか化粧室だとかに設定して、ヴォヤイアリスティ…
必要があって、モダン都市文化叢書から「ダンスホール」の巻を読む。その中のダンスホールについての扇情的な雑文が面白かった。文献は、和田博文監修『コレクション・モダン都市文化』(東京:ゆまに書房、2004) 第4巻所収の、小野薫『ダンスホール エロ享…
必要があって、20世紀初頭のアメリカの精神病院を研究した著作を読む。文献は Lunbeck, Elizabeth, The Psychiatric Persuasion: Knowledge, Gender and Power in Modern America (Princeton: Princeton U.P., 1994) 精神病院の患者記録という良質な資料の組…
不惑を超えてみっともない話だけれども、バトンで自分の名前を見ると、それを拾いたくなってしまう病気が治りません。 暫く前のひとみどんさんバトンに続いて、あめりさんのところで同じようなバトンを拾ってしまいました~ ルールはですね、バトンを拾いた…
必要があって江戸末期の利根川流域の地誌を斜め読みにする。文献は、赤松宗旦『利根川図誌』柳田国男校訂(東京:岩波文庫、1938, 2004)。葛飾北斎が著者の父に与えた図版も多く使われている。 『利根川図誌』という有名な幕末の図誌がある。1858年に刊行さ…
未読山の中から「そもそも精神科医は精神病を見抜けるのか」を「実験」した古典的な論文を読む。文献は Rosenham, D.L., “On Being Sane in Insane Places”, Science, n.s.179(1973), 250-258. 「正気と狂気を見分けようとするのは、それ自体狂気の沙汰だ」…
ディーテイルズ? No.8 です。 正解は、アングル「ヴァルパンソンの浴女」です。 正解は先着順に、きいちごさん、makinomasaki さん、notremusiqueairさんです。 きいちごさんも絵画クイズを主催されています そちらもどうぞ~http://blogs.yahoo.co.jp/kiic…
ディーテイルズ? No.7、正解はベルニーニ「聖テレサの法悦」です。 これまでは第一ヒントを、絵の隅から出していたのですが、ちょっと反省して、いきなり中心から出してみました。 テレサの顔と天使の矢が、ものすごく色っぽいので有名ですけれども、テレ…
必要があって、日本の更年期の医療人類学を読む。文献は、マーガレット・ロック「女性の中年期・更年期と高齢化社会」脇田晴子・S.B.ハンレー編『ジェンダーの日本史』(東京:東大出版会、1994), 597-624. 筆者は日本をフィールドにした医療人類学の第一人…
皆さまのご協力で、事情が分りました。ある人気ブログに私宅監置の記事がリンクされたとのこと。そのブログを教えていただいたのですが、とても美しいプロっぽいページに、面白い写真がセンスよくレイアウトされていて、人気ブログというのはこういう造りな…
必要があって、イギリスの精神医学者が1937年のヨーロッパの精神医学施設を回覧した記録を読む。文献は、Lewis, Aubrey, European Psychiatry on the Eve of War: Aubrey Lewis, the Maudsley Hospital and the Rockefeller Foundation in the 1930s, edited…
すみません、クイズではありませんが・・・緊急事態ですので。 昨日から訪問が急増して、普段の5倍くらいになっています。 「ランダム」に入ったのかと思っていたのですが、それでも多すぎます。 訪問者の方、いったい何が起きたのですか? 「医学史」病が…
必要があって、第二次大戦中の精神病院の医者、患者、看護士などの証言を集めた貴重な書物を読む。文献は、塚崎直樹『声なき虐殺』(東京:BOC出版部、1983) 昭和19年と20年は、日本中の精神病院で患者がなぎ倒されていった悪夢の二年間であった。精神病院…
今日は画像だけです。昨日の記事に付すべき画像ですね、本当は。 大正期の日本の私宅監置 いわゆる座敷牢の図面と写真。 上から「良いもの」「普通のもの」「悪いもの」となっている。 一番下の「悪いもの」の写真には、中に閉じ込められた人の手が写ってい…
東京のモダニズムの入門的な勉強が続く。文献は、松山巌『乱歩と東京 1920都市の貌』(ちくま学芸文庫、1994) 江戸川乱歩の小説を、モダニズム都市としての東京と、そこに生きる人々の不安から読み解くといった感じの文芸評論。私の乱歩についての知識は恥…
未読山の中から、18世紀後半のエディンバラ医学校の教授、ウィリアム・カレンの治療学の哲学を読む。文献は、Stott, Rosalie, “Health and Virtue: or, How to Keep Out of Harm’s Way. Lectures on Pathology and Therapeutics by William Cullen”, Medical…
必要があって未読山の中から大正から昭和の<変態研究>を論じた歴史書を読む。文献は菅野聡美『<変態>の時代』(講談社現代新書、2005)。 <変態>という言葉が、最初は広く「異常・特殊」という程度の意味から、変態性欲を意味する言葉へと変遷していく…
新着雑誌からECTをめぐる現在の論争を分析した論文を読む。文献は吉村夕里「精神医療論争-電気ショックをめぐる攻防-」Core Ethics, 3(2007), 375-390. 1930年代に誕生したECT(電気痙攣療法、通称電気ショック)は、向精神薬が現れるまで精神病治療のひと…
必要があって14世紀のペスト(黒死病)に対するイスラム教地域の反応を、ヨーロッパ地域のそれと較べた古典的な論文を読み直す。文献はDols, Michael W., “The Comparative Communal Responses to the Black Death in Muslim and Christian Societies”, Viat…
未読山の中から、16世紀の梅毒の起源に関する一説を分析した論文を読む。文献はEamon, William, “Cannibalism and Contagion: Framing Syphilis in Counter-Reformation Italy”, Early Science and Medicine, 3(1998), 1-31. しばらく前に取り上げたイタリア…
未読山の中からピエトロ・アレッティーノの英訳を読む。文献はAretino, Pietro, The Secret Life of Nuns, foreword by Paul Bailey, introduction and translation by Andrew Brown (London: Hesperus, 2006); The Secret Life of Wives, foreword by Paul …
必要があって建築から見た明治の東京学の古典を読む。文献は初田亨『東京 都市の明治』(ちくま学芸文庫、1994) 本書は1981年に出版された書物である。江戸から東京への建築の変遷を、単調な西洋化論から救うと同時に、建築の様式の分析を超えて、都市は人…
未読山の中から精神薬学革命が何をしたのかを測定しようとした論文を読む。文献は村上国世「薬物療法の導入による精神分裂病の経過と病像の変化」『精神神経学雑誌』73(1971), 635-648.現在統合失調症と呼ばれている病気に対する有効な薬物治療が導入されて…
ディーテイルズ? No.7、正解はベルニーニ「聖テレサの法悦」です。 これまでは第一ヒントを、絵の隅から出していたのですが、ちょっと反省して、いきなり中心から出してみました。 テレサの顔と天使の矢が、ものすごく色っぽいので有名ですけれども、テレ…
必要があって奄美諸島の精神病患者の私宅監置についての報告を読む。文献は佐藤幹正「奄美地方復帰当時における精神病患者の処遇状況について」『九州神経精神医学』4(1955), 140-149. 1900年の精神病者監護法で「私宅監置」が法制化される。この法律につい…