Entries from 2008-06-01 to 1 month
土木学会編『日本土木史』(東京:岩波書店、1936)からのトリヴィア。港として適している地域は良い飲料水を得にくく(厳密にはなぜだろう?)、住民は飲料水に苦労することが多かったことは良く知られている。また、船が寄港したときに飲料水を提供できな…
ロンドンのテムズ川をめぐる衛生の古典を読む。文献は、Luckin, Bill, Pollution and Control: a Social History of the Thames in the Nineteenth Century (Bristol: Adam Hilger, 1986).小さな出版社から出ているので見落としていたけれども、著者は有名な…
必要があって、ルネッサンスのクリトリスをめぐる古典的な論文を読む。文献は、Park, Katherine, “The Rediscovery of the Clitoris: French Medicine and the Tribade, 1570-1620”, in David Hillman and Carla Mazzio eds., The Body in Parts: Fantasies …
未読山の中から、中勘助『銀の匙』を読む。高校生の時にちょっと読んだことがあって、そのころはなんとも思わなかったけれども、年をとってから読むと、何気ないけれども心に沁みてくるような回想の随筆である。いくつかほしかった情報を含んでいる部分を抜…
未読山の中から、アントナン・アルトーがメキシコでペヨーテを吸引した経験をつづった文章を読む。文献は、アントナン・アルトー『アルトー後期集成I』宇野邦一・岡本健訳(東京:河出書房新社、2007)の7-125ページに「タラウラマ」としておさめられてい…
昨日取り上げた鈴木理生による江戸-東京の歴史地理学のヴィジュアル版で、日本実業出版社から2006年に出ている。この手の「絵本」を読むことはあまりないのだけれども、感染症の空間的な分布と伝播を考えるときには、どうしてもヴィジュアルな表現とセンス…
昨日記事にした安政江戸地震の書物の、都市表層の下にある地層への注目は、この著者の書物に影響を受けている。鈴木理生『江戸はこうして造られた-幻の百年を復原する』(東京:ちくま学芸文庫、2000) この本は、プロの研究者たちがどのような評価を下して…
安政2年(1855年)の江戸の大地震の研究書を読む。文献は、野口武彦『安政江戸地震 災害と政治権力』(東京:ちくま学芸文庫、2004)1855年に江戸を襲ったマグニチュード6.9(どうやって出した数字なのだろうか?)の大地震について、緻密な研究と、鋭い洞察…
今日は無駄話を書く。文部科学省は認めたがらないかもしれないが、「君が代」は人気がない国歌であるというのはまぎれもない事実である。「君が代」を愛唱している日本人はいたとしてもごく少ない。オリンピックの表彰式などのスポーツの国際大会のときです…
ワンポイントの情報を確かめたくて、パノフスキーの書物を読む。実際に読んだのは3ページくらいだけど(笑) 文献は、エルヴィン・パノフスキー『ティツィアーノの諸問題-純粋絵画とイコノロジーへの眺望』織田春樹訳(東京:言叢社、2005)ヴェサリウスの…
天然痘の悪性度(ビルレンス)の変化についての論文を読む。文献は、Carmichael, Ann G. and Arthur M. Silverstein, “Smallpox in Europe before the Seventeenth Century: Virulent Killer or Benign Disease?”, Journal of the History of Medicine and A…
未読山の中から、19世紀から20世紀にかけてのアメリカの健康状況を論じた古典的な論文を読む。文献は、Meeker, Edward, “The Improving Health of the United States, 1850-1915”, Explorations in Economic History, 9(1972), 353-373.1850年から1915年にか…
未読山の中から、ローデシアの眠り病コントロールに関する論文を読む。文献は、White, Luise, “Tsetse Visions: Narratives of Blood and Bugs in Colonial Northern Rhodesia, 1931-9”, Journal of African History, 36(1995), 219-245. この論文の独創性は…
必要があって、ユングのパラケルスス論を読む。文献はC.G. ユング『錬金術と無意識の心理学』松田誠思訳(東京:講談社+α新書、2002)。ユングがパラケルススを論じるという神秘思想の大物同士の豪華な顔合わせで、その書物が880円というのはお買い得。個人…
必要があって、『エイリアン4』を観て、それについての無内容な無駄話。私は『エイリアン』のシリーズが好きで、感染症とか寄生虫病などの話を授業でする時には、あまり関係はなくても必ず『エイリアン』に言及する。特に『エイリアン4』は、宗教的なテー…
必要があって、『岩手県漁業史』(1984)の江戸時代と明治初期の部分を読む。私は医学史の研究者だけど、このような文献を読まなければならない研究に迷い込んだことが、自分でもちょっと信じられない(笑)リアス式海岸で有名な三陸地方は現在でこそ日本有…
必要があって、Howell, David L., 『ニシンの近代史―北海道漁業と日本資本主義』(東京:岩田書院、2007)を読む。とても魅力的な本だったけど、必要なところだけを拾い読みにした。江戸時代から松前藩は「場所請負制」を定め、一握りの特権商人に大規模な交…
未読山の中から、アフリカのエイズ流行をミクロ経済学のツールで分析した論文を読む。文献は、Philipson, Tomas and Richard A. Posner, “The Microeconomics of the AIDS Epidemic in Africa”, Population and Development Review, 21(1995), 835-848. この…
おなじく新着雑誌から、20世紀初頭にフランスの女性精神医学者第一号になりそこねた(笑)マドレーヌ・ペレティエについての論文を読む。文献は、Gordon, Felicia, “Convergence and Conflict: Anthropology, Psychiatry and Feminism in the Early Writings…
新着雑誌から、エスキロールの精神病の疾病分類と徴候学を論じた論文を読む。文献は、Huertas, Rafael, “Between Doctrine and Clinical Practice: Nosography and Semiology in the Work of Jean-Etienne-Dominique Esquirol (1772-1840)”, History of Psyc…
必要があって、濱田秀伯『精神病理学 臨床講義』(東京:弘文堂、2002)の必要な部分を読み返す。しばらく前に教えていただいてから愛用している精神病理学の教科書である。私は精神医学者ではないから、専門的な見地から評価することはできないし、他に評価…
必要があって、16世紀のパドヴァの医学校の歴史を論じた論文を読む。文献は、Bylebyl, Jerome, “The School of Padua: Humanistic Medicine in the Sixteenth Century”, in Charles Webster ed., Health, Medicine, and Mortality in the Sixteenth Century …
頂いた論文を読む。文献は、中村一成「戦前・戦時の都市民衆と医療-東京市の事例から-」『民衆史研究』75号(2008), 3-18.医療費支払いに困難を抱える下層民衆と、そもそも医師をはじめとする医療供給に乏しい農村地域の二つを主要な問題として、「民衆が…
必要があって、山口徹『海の生活誌』(東京:吉川弘文館、2003)を読む。腰を据えて読めば興味深い話題が満載された本なのだけれども、さすがに鰯の地引網の変遷などの解説をいちいち追っている暇はないから、拾い読みをした。本全体としては、海辺の村はみ…
同じシリーズから、鹿児島の精神医療について。文献は、松本啓・上山健一「日本精神医学風土記 鹿児島県」『臨床精神医学』21(1992), 139-146.鹿児島は地方部にしては比較的早く県立の精神病院ができた。大正13年に県立鹿児島病院精神科分院が作られ、昭和5…
茨城の精神医療風土記を読む。文献は、倉持弘・大原重雄「日本精神医学風土記 茨城県」『臨床精神医学』19(1990), 117-126.覚えておきたいポイントは三つ。江戸の精神病院と、温泉と、医師会と精神病院の関係。第一に、1849年に奈良林一徳が小松川に江戸に…
未読山の中から、群馬の精神医療の歴史についての記事を読む。文献は、香内信一「日本精神医学風土記 群馬県」『臨床精神医学』18(1989), 427-432. この「精神医学風土記」のシリーズは何回か記事にして、私はわりと気に入っている。書いた先生には申し訳な…
ガレノス医学の歴史の概説の古典的な記述を読み直す。文献はTemkin, Oswei, Galenism: Rise and Decline of Medical Philosophy (Ithaca: Cornell University Press, 1973).ガレニズムについて何かを書いたり話したりするときには、他にも参照すべき本は沢山…
何の必要もなかったけれども(笑)、映画『つぐない』を見る。ジェイムズ・マカヴォイとキーラ・ナイトレー主演。ある少女が、淡い初恋を抱いていた姉の恋人の男を強姦事件の犯人に仕立ててしまい、その男は大学に進学するはずだったのが、刑務所から第二次…
必要があって、公開解剖とカーニヴァルという、カルスタ系の学者が待望してきた主題に関する論文を読み返す。文献は、Ferrari, Giovanna, `Public Anatomy Lessons and the Carnival: the Anatomy Theatre of Bologna' Past and Present, 1987, no.117, 50-1…