カーニヴァルの解剖学

必要があって、公開解剖とカーニヴァルという、カルスタ系の学者が待望してきた主題に関する論文を読み返す。文献は、Ferrari, Giovanna, `Public Anatomy Lessons and the Carnival: the Anatomy Theatre of Bologna' Past and Present, 1987, no.117, 50-106. この論文を私が始めて読んだころは、バフチーンをはじめ、カーニヴァルとかグロテスクとか境界侵犯とか、その手の概念が流行していたころで、とても期待して読んだことを思い出す。貴重な考察だけれども、カーニヴァル的な側面を伝える資料はきわめて乏しく、あまりそういうったことを期待しないほうがいいです。

話のポイントは簡単で、解剖講義は公開であったこと、死体の腐敗を防ぐために寒い期間に行われたこと、他の大学で学んでいる学生たちも参加できるように、大学の通常の講義が休みの時期に行われたこと、その結果、解剖講義にはカーニヴァルで浮かれて仮面をつけた人々も聴衆として参加していたこと、ボローニャ大学は「仮面をつけて解剖講義に参列してはいけない」という規則を出したが、効果はなかったこと、などが書かれている。