Entries from 2006-02-01 to 1 month
フェローから紹介された現代の疫学調査の論文を読む。 世界遺産で有名なベトナムの古都フエ市を流れるフォン川には水上生活者が多くいる。その水上生活者の疫学調査をした論文を読んだ。フォン川(実はこのあたりの私の地名表記は少しあやしい・・・)は、th…
ゼンメルヴァイスの産褥熱の古典的な論文を読む 1847年にウィーンの産科病院の医師ゼンメルヴァイスは、産婦に触れるときには石炭酸で手を洗うことを徹底して、産褥熱の死亡率を劇的に下げた。医学史の古典的な輝かしい発見の一つである。さらに、彼の発見は…
「ご恵与された論文」を少し前にブログで取り上げたが、これはなかなか良い仕組みかもしれない。色々な論文やご著書などを頂いたときに、お礼を書くわけだけれども、読まないのにお礼は書けないなどという妙な良心が働く。お礼の葉書を机に置いて大慌てで目…
19世紀の人間身体と発電・送配電システムのアナロジーを学ぶ。 今回は大著の一部だけをピックアップ。4月の初めにある学会で読むペーパーで、久しぶりに科学的なコンセプトの分析も取り入れた話を作らなければならない。これまで社会史と疫学の仕事が続いたの…
セネガルのペストについての研究書を読む。 ペストには3回のパンデミーがあったことは良く知られている。一番広がりがあったのは3回目のパンデミーで、中国に発してインドや東南アジアやアフリカの広い範囲に被害が出た。日本もこの3回目のパンデミーに巻き…
久しぶりに一次資料である。1844年に出版された病人介護論である。 19世紀のイギリスの研究者なら知っている人物だが、ハリエット・マーティノー(Harriet Martineau, 1802-1876)という女性がいる。多彩な作品を残した著述家で、経済学の一般向け解説書を書…
母乳保育とその衰退の国際比較史を読む 国際比較という手法は医学史でも盛んに(あるいは安易に)試みられている。その中でも、20世紀の母性運動というのは、国際比較の研究が充実している分野の一つである。論文集も何点か編まれているし、日本では川越修先…
「未読」の山の中から、1890年代のアフリカの牛疫についての論文を読む。 牛疫(rinderpest) の流行としては、1880年代にイタリアからエリトリアに持ち込まれて、90年代、特に1896年から98年にかけてのアフリカ全体に広まって、サハラ以南の牛の80-90%を斃…
ある論文のためにHealth Transition Review という雑誌を過去10年分くらい目を通していたら、別の仕事の脈絡で面白い論文があった。西アフリカのAIDSである。 西アフリカにおいては、植民地化以前から現在でも長距離交易が盛んであった。行商人といえば男し…
先日知り合いの大学院生にわざわざお願いして送っていただいた論文を読む。 この10-15年くらいで、日本では大なり小なりフーコーにインスパイアされた身体と衛生の権力論の鳥瞰的な仕事が沢山出たが、それが一段落して、そういった仕事では光を当てられなか…
一昨日に続いて新着雑誌から。ウィア・ミッチェルに治療された神経衰弱の女流文学者(literary womenって、何て訳すんだろう?) についての論文を読む。 もしウィア・ミッチェルS. Weir Mitchellがシャーロット・パーキンス・ギルマンの神経病を治療していなか…
ポストモダン医療における病院建築の心得を説いた書物を読む。一昨年、都心の大学病院で、あれはなんだったのだろうか、とにかく40歳になると必要な中年病の検査をした。検査自体も筆舌に尽くしがたい拷問だったのだけれども、その検査を受けるオフィスに行…
新着雑誌から。20世紀アメリカの処方薬をめぐる論争についての論文を読む。 専門に研究している人は良く知っていると思うが、薬の歴史というのは、医学史の中で一番複雑で難しい分野だと思う。一方で処方された薬から成分を突き止めてそのバイオケミカルな効…
近代的自己の形成の大著を(少し)読む。 しばらく前に、「近代的自己と衛生」などという大問題について、あたりをつけようとしたことがあって、時間と能力を考えると読めるわけがない本をむやみに借り出した。ハッキングの本を借りたのも、実はその流れだっ…
このブログでも前に取り上げたイアン・ハッキングの著書、 Historical Ontology を読む。 精神医学、心理学の歴史でも沢山のいい仕事を出しているハッキングが Historical Ontology という本を出したと聞いて期待していた。どこで勘違いしたのか、これまでの…
グリーンブラットの本を読む。 私には何人か「好きな」学者というのがいる。その人が書いたものはどれでも読むのが楽しい、そんな学者たちである。問題の立て方や、分析の仕方、表現の仕方で、ああ、この人らしくていいなあという「スタイル」を感じる学者が…
ロベルト・コッホの論文集を読む。 今年の授業で細菌学革命を教えた時にふと気がついたのだけれども、コッホが書いた論文というのを一本も読んだことがない。告白すると、こういう医者は沢山いる。英訳だろうが日本語訳だろうがヴェサリウスの『人体構造論』…
19世紀後半の二つのエルニーニョが世界に巨大な影響を与えたことを論じた書物を読む。昨夜読み始めて、余りに面白かったので、だいぶ読み飛ばしながらだけれども、今日の午後に一気に読んでしまった。気候の歴史と洗練されたグローバル・ヒストリーを絡めた…
4月から月刊誌に連載をすることになって、その最初の回の締め切りが数日後に迫っている。その仕事に手一杯で、別の本を読んでいる余裕はないはずだけど、現実逃避的に、次の次の次の次(笑)くらいの仕事に関係がある、インドにおけるイギリスの気候馴化の可…