水上生活者の疾病

 フェローから紹介された現代の疫学調査の論文を読む。

 世界遺産で有名なベトナムの古都フエ市を流れるフォン川には水上生活者が多くいる。その水上生活者の疫学調査をした論文を読んだ。フォン川(実はこのあたりの私の地名表記は少しあやしい・・・)は、the Perfume River (何てべたべたにオリエンタリズムな名前・・・)と英訳されているけど、水上生活者たちの85%が川に直接排泄し、54%がごみをそのまま川に投げ捨てると答えている。飲み水・調理用の水を川からそのまま使うのは10%前後だが、川の水を洗いものに使うのは90%以上である。伝染性の下痢は1年で65-70%程度が罹患しているが、この病気のプレヴァレンスは水使用と非常に強い関係があって、水を飲む前に「いつも煮沸する」と答えている人の罹患を1とすると、「時々煮沸する」グループは1.37, 「煮沸しない」は4.70になる。

 こういう情報が欲しかった。断片的だけど、歴史のデータではなかなか手に入らないタイプの情報である。

Quang, Nguyen Khac, et.al., “Variation of Health Status among People Living on Boats in Hue, Vietnam”, Journal of Epidemiology and Community Health, 59(2005), 941-947.
ウェッブで検索したら、この水上生活者たちの「陸上がり」が始まっている。このあいだ、沖浦和光『瀬戸内の民俗誌』(岩波新書、1998) や、ナショナル・ジオグラフィックミャンマーの海の民の話を読んで面白かったが、水上生活者はやはり絶滅が危惧されているらしい。
http://vietnamnews.vnagency.com.vn/2004-05/15/Stories/13.htm
http://nng.nikkeibp.co.jp/nng/feature/0507/index4.shtml