Entries from 2014-07-01 to 1 month
新井義也『天国街道―結核療養所 保生円の日々』(東京:英治出版、2006) ハンセン病、精神病、結核は、20世紀の前半から後半にかけて日本が隔離収容した三つの疾病である。この中で、患者も一番多く、最も深刻大規模な問題であった結核が、意外に歴史研究で…
David, Elizabeth, A Book of Mediterranean Food, foreword by Clarissa Dickson Wright (New York: New York Review Books, 2002). お料理の素材として、卵がかなり好きだ。目玉焼き、ゆで卵、スクランブルド・エッグ、卵焼き、茶碗蒸しと、どれもとても好…
症例誌 / 診療録は、医療者側が、ある患者についての観察したことなどを記録した資料である。欧米の医学史研究においては最強というか必須の史料であり、このタイプの資料を用いて、20年か30年ほど前から色々な方面に医学史研究が発展してきた。 昭和戦前期…
ドグラ・マグラについて議論の要点を示した部分です。 夢野の本名は杉山直樹で、のち改名して泰道となった。家庭は裕福で父親は右翼系の壮士であり文章も書いた。両親の離婚のため複雑な家庭生活の子供時代を送り、福岡の高等学校を卒業したのちに軍隊に入隊…
同じく『ドグラ・マグラ』を論じる論考にいれる背景の一部です。もちろん下書きですので、引用しないでください。また、先日は大変貴重なコメントを頂きましたが、また皆様からコメントを頂ければ幸いです。 「狂った科学者・狂った医学者」という主題は、メ…
いま、『ドグラ・マグラ』についての原稿を一本用意していて、その背景として、 日本における優生学と文学の関係について少し書いてみました。臨床と政策における優生学と、文学における優生学的な想像力の関係を どう考えたらいいのか、手さぐりで考えてい…
ツィッター上で友人に勧められて、小津安二郎監督の遺作『秋刀魚の味』のDVDを借りて観る。1962年の製作・配給で、婚期を迎えた娘を見合いさせて送り出す父親の老いと孤独を描いた作品。主演の父親役は笠智衆、娘役は岩下志麻で、それ以外にも杉村春子、佐田…
Grant, Edward ed., A Source Book in Medieval Science (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1974). 先日の大学院の授業で、医者が書いたテキストのジャンル分けの話をしているときに、アサインメントとして使ったモルガーニの書簡は、後期中世に…
前田久美江編著『現代医療の原典を探る―百年前の雑誌「医談」から』(京都:思文閣、2004) 『医談』は明治26年から41年にかけて刊行されていた雑誌。合計で115号が刊行され、1986年に3巻本で復刻出版された。この復刻は古書で手に入るが高価であり、興味深…
今学期は日吉キャンパスの歴史学の授業で、授業内容をほぼ100%英語で提供した授業を行った。かつては「一般教養」と呼ばれた授業で、対象は全学部の主として1・2年生で、自由に選択して履修できる科目である。内容は精神疾患と精神医療の歴史で、今学期は古…
サミュエル・ガース『薬局 17世紀末ロンドン医師薬剤師大戦争』西山徹編訳、高山修・服部典之・福本宰之訳、岡照雄序(東京:音羽書房鶴見書店、2014) 17世紀から18世紀にかけてイギリスで活躍した内科医である Samuel Girth が書いた The Dispensary が翻…
Tsiamis, Costas, Effie Poulakou-Rebelakou, Spyros Marketos, “Earthquakes and Plague during Byzantine Times: Can Lessons from the Past Improve Epidemic Preparedness?”, Acta med-hist Adiat 2013; 11(1), 55-64. ペストというと14世紀の黒死病には…
ガレノス『解剖学論集』酒井建雄・池田黎太郎・澤井直訳(京都:京都大学出版会、2011) ガレノスの解剖学のテキストのうち6点を翻訳したものである。「骨について初心者のために」「静脈と動脈の解剖について」「神経の解剖について」「臭覚器について」「…
曲直瀬玄朔原著、高島文一註釈『医学天正期について』(京都:私家出版、2009) 『医学天正期』は天正年間から慶長年間にかけて曲直瀬玄朔が記録した診療の記録。60の疾患部門に分けられ、合計で300余名の患者について記されている。(同一の患者が複数の部…
権田萬治『日本探偵作家論』幻影城評論研究叢書(東京:幻影城、1975)を読む。さすが名著として評価が定まっている評論であった。探偵小説の捉え方についての洞察は深く、個々の作家や作品についての論評は大きく首肯するものであった。もちろん、私が知っ…
Pomata, Gianna, “Sharing Cases: The Observationes in Early Modern Medicine”, Early Science and Medicine 15 (2010), 193-236. ルネサンスから18世紀の医学テキストにおける症例の意味を検討した論文。初期近代ヨーロッパの研究者はもちろんのこと、す…
小野直子「アメリカの優生学運動と生殖をめぐる市民規範―断種政策における<適者>と不適者>の境界」、樋口映美・貴堂嘉之・日暮美奈子編『<近代規範>の社会史』(東京:彩流社、2013), 163-185. 平体由美「アメリカ南部寄生虫対策とコミュニティ公衆衛…
ナンシー・デュアルテ『ザ・プレゼンテーション 人を動かすストーリーテリングの技法』中西真雄美訳(東京:ダイヤモンド社、2012) アメリカのCEOのプレゼンテーション技法の本を斜め読みする。良いことがいくつも書いてあったからメモしておく。 最初の設…
眞嶋さんから新刊のご著書をご恵贈いただきました。ありがとうございます。近現代の日本の主に文学や思想から題材をとり、西洋化・文明化を懸命に試みていた国家と社会に生きる知識人にとって、肌の色が違うという情け容赦ない現実は何を意味したのかを問う…
進行麻痺について基本的なメモ。精神医学辞典や Wikipedia などから。 進行麻痺 (general paralysis, GPI) は、梅毒が進行して第四期となり、脳実質が侵された時に発症する精神疾患である。1822年にパリの Antoine Bayle によって独立した疾患として記述され…
Poe, Edgard Allan, “The Facts in the Case of M. Valdemar”, Kindle にダウンロードしたThe Complete Works (無料)で読んだ。10ページ程度の短い短編である。 「ヴァルデマール氏の症例についてのいくつかの事実」は、エドガー・アラン・ポーの優れた短…
Hippocrates, Hippocrates, vol.VII, edited and translated by Wesley D. Smith, Loeb Classical Library (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1994). 症例の文体について考えるために、ヒポクラテス文書の『流行病論』2巻、4-7巻を読む。 ヒポ…
Dacome, Lucia, “Women, Wax and Anatomy in the ‘Century of Things’”, in Sandra Cavallo and David Gentilcore eds., Spaces, Objects and Identities in Early Modern Italian Medicine (Oxford: Blackwell Publishing, 2008), 50-78. Vivo, Filippo de.…
Pethes, Nicolas, “Telling Cases: Writing Against Genre in Medicine and Literature”, Literature and Medicine, vol.32, number 1, Spring 2014, 24-45. 同じく Medicine and Literature の症例特集から、近代ドイツの文学と症例についての論文。概念的…
Pomata, Gianna, “The Medical Case Narrative: Distant Reading of an Epistemic Genre”, Literature and Medicine, vol.32, number 1, Spring 2014, 1-23. 雑誌 Literature and Medicine が症例というジャンルという特集を組んだ。ちょうど症例についての…