中世医学の コンシリウム

Grant, Edward ed., A Source Book in Medieval Science (Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1974).

先日の大学院の授業で、医者が書いたテキストのジャンル分けの話をしているときに、アサインメントとして使ったモルガーニの書簡は、後期中世に確立した consilium と呼ばれるジャンルの一つであるという話をした。Consilium とは何かという説明は、Nancy Siraisi 先生やPomata 先生の一連の著作や説明されているが、一番いいのは古いものを実際に一つ読んでみることである。グラントの中世科学史の資料集に入っていないかと思ったら、やはりあったので、喜んで読んだ。グラント編の資料集は、私が持っているただ一つの中世医学史の資料集である。自然哲学と医学理論だけでなく、解剖学、医療のふるまい、ハンセン病、脈と尿、生殖医療など、医療の多様な側面がわかる選択になっているあたりも優れている。

 

掲載されているのは、シエナの医師である Ugo Benzi (1376-1439)のコンシリウムである。約60才の貴族について、治療というか養生の方針について書かれた報告である。全体に、 Regimen – Food and drink – medicinal treatment の三つの大項目に分けて書いてある。Regimen の中には、もちろん emotions というサブカテゴリーもあるから、そこに心理的な方法が出るのは当然である。Food and drink の中には、ワインを飲む量があったので、多少気になって計算したら、一回の食事で250ml くらいを飲むといいとのこと。貴族だけあって、特に病気をしていないにもかかわらず、薬を飲まなければならないし、月に一回くらいの頻度で下剤をかけなければならない。冬は食事の5時間前に mithridates という薬を飲まなければならない。この薬は毒を解毒するともペストの予防とも言われている。