『中国の科学と技術 イエズス会士書簡集』矢沢利彦編訳(東京:平凡社、1977)

『中国の科学と技術 イエズス会士書簡集』矢沢利彦編訳(東京:平凡社、1977)

 

イエズス会士が中国の科学と技術、特に医学について報告した書簡を選んでまとめ、それを翻訳した資料集。非常に便利なもので、もっと早く入手しておけばよかったと思う。個別の資料は後から読む。冒頭に面白いことが書いてあったのでメモ。

 

イエズス会が中国に来てその文明、特に科学技術や医学に触れたのは16世紀からであり、19世紀以降と違って、この時期の西欧人は中国や他の地域の科学技術・医学などについて、頭ごなしに低く見ることはしなかった。そのため、中国の医学に対しては、高く評価するものもいたし、そうでないものもいた。後者の代表例はマテオ・リッチを挙げることができる。1590年代に同じイエズス会のアルメイダが病気になったときに、「われわれの医師」と呼ぶヨーロッパ系の医師をマカオから連れてきて治療させている。一方で、前者としては、ポルトガルイエズス会士であるアルヴァレス・デ・セメートが一つの例となる。セメートは、中国医学とヨーロッパの医学の違いに気がついており、たとえば中国医学瀉血をしないなどの特徴を持っているということを列挙しているが、しかし中国の医師に進んでかかっている。