16世紀中葉から17世紀のイエズス会士が、日本における布教の様子を書き送った報告書の全訳。キリスト教の信徒の獲得、教会や学校の設立など、布教の成功が語られるとともに、仏教僧との確執、秀吉やキリシタン大名たちの様子、布教した民衆の観察などが生き生きと記されている。原文はラテン語やポルトガル語などで、この翻訳のおかげでどれだけ多くの研究者がこの貴重な資料を安心して使うことができるようになったことだろう。
本来は疫病についての記述を探していて、その方面でいくつかの面白い記述もあったけれども、出てくる疾病-というべきだろうか-の出現頻度でいうと、間違いなく抜群のNo.1 は、イエズス会士たちがいうところの「悪魔つき」である。これは、別の文献では日本人が「狐つき」と呼んでいるものだと記されているし、前田利家の娘についた「悪魔・狐」は、「私は岡山の稲荷である」と名乗っているそうだから、狐つきが問題になっていることは間違いない。