18世紀の診療書簡集のウェブ上データベース 

18世紀の後半のエディンバラ医学校は、イギリス内はもちろん最高の医学教育機関、ヨーロッパでも有数の医学教育の中心であった。そこの教授で著名な医師がウィリアム・カレン(1710-1790) であり、彼については数多くの資料が残っているが、その中でももっとも重要なものは診療書簡集であろう。この時期は、医師に手紙を書いて病状を報せて、それに対して医師が手紙で返事を書くことが一般的に行われていた。著名なものとしては、ジアンバティスタ・モルガーニの診療書簡集がある。この数年、私はほぼ毎年この書簡集を大学院の授業のマテリアルとして用いており、学生に最も人気があるものである。文献情報は以下の通り。

Morgagni, Gianbattista, The Clinical Consultations of Gianbattista Morgagni, the edition of Enrico Benassi (1935), translated and revised by Saul Jarcho (Boston: The Francis A. Countway Library of Medicine, 1984).

 

今回の記録は、カレンの診療書簡集のテキストをネット上にアップし、検索できて、それぞれの症例に説明をつけたものである。カレンのような著名な医師であると、数多くの診療書簡が寄せられており、ここで記録されている症例の数は2,500点くらいだから、十分な数がある。それだけでなく、それに対するカレンの返信も残されている点が、特に価値が深い。ある状態を、患者やその家族がどのように記述したかという問題と、医師、それもヨーロッパでも指折りの大学教授がどのように理解して処置をしたのかという問題の双方を、それぞれの症例に応じて理解できるからである。

これは、これまで何度も言ったけれども、これからも何度でも言おう。医療を作っているのは患者と医者と疾病という三要素である。その三つを同時に把握できる資料、そしてそれについての患者と医者の意見がどちらも分かるお得な資料というのは、それほどあちこちにごろごろ転がっているわけではない。新しい医学史を習うときには、この史料をまず使うといい。しかし、だからといって、これまでずっと頼りにしてきたモルガーニを忘れることは、決していないけれども(笑)

 

The Cullen Project | The Consultation Letters of Dr William Cullen (1710-1790) at the Royal College of Physicians of Edinburgh (RCPE). A Glasgow University Digital Edition.