日本語「カルテ」の巨大な衝撃

御前隆先生という医師が「D・ゲンゴスキー」という筆名で2006年の『医学界新聞』の連載した「教養としての医者語」という文章がある。日本の医師たちが使っているドイツ語崩れの日本語の話である。私には非常に面白いし、エクセルのファイルにせっせと入力している。

その中で、衝撃中の衝撃の情報。「カルテ」という日本語に関して巨大な衝撃を与えた情報である。「カルテ」という日本語は「医者が書く診療日誌」という意味を持つ。「この研究が用いた史料は症例誌、いわゆるカルテです」という文章を何度も使った医学史研究者は誰なのか、私にわざわざ教えてくださらなくても結構です。その文章には、ドイツ語の Karte は、医者が書く診療日誌という意味をもつドイツ語があり、それは die Karte であるという巨大な錯覚がある。それが大間違いに間違っている。ドイツ語の die Karte は、もちろん基本は card で、それにふさわしい札とかカードや地図などの意味を持っている。しかし、そこには医学記録の意味はいっさいない。どこかで日本人が「カルテ」という言葉に「診療録」の意味を与えているのである。ドイツ語 die Karte がどのような英訳ができるかの一覧だが、そこには医学のイの字もない。

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新聞サーチをしてみると、1950年代から60年代にかけて、医学的な意味での「カルテ」という言葉が使われ始めている。いったい何があったのだろう。