「数人」と several persons と mehrere Personen

山口明穂. 日本語を考える: 移りかわる言葉の機構. 東京大学出版会, 2000.

日本語とドイツ語の問題を考えて少し本を読んだら、一つの面白い視点を思いついた。「数人」「数日」が持つ「数」の概念と、英語の several 、ドイツ語の merher という似たような概念を較べてみようという発想である。

英語の several から入ると、数人とか数日とか訳せばいいのだけれど、具体的にその時の数字は何かという問題がある。ぱっとみた感じでは、考え方は二つあって、一つは、2や3より大きくて、多数よりも少ないという考えである。実佳はこの考えで、5,6,7くらいと言う。これが英語の主流の考えであり、OEDを引くと、古いものも新しいものも「2・3よりも大きく、しかし多数ではない」と書いてある。それに対して「2より大きく、多数ではない」という理解も存在している。私がそうである。私は、3についてはもちろん、2でも several という言葉を使っても間違いではないと考えている。これはもちろん変人だからなのかもしれないけれども(笑)、現代英語では "more than two but many" と説明されている。ここで more than を以上と考えると、いけないのは1だけである。簡単に言うと、2と3を否定するタイプと、1はだめ、2からは使っても可、それからとても大きいとだめというタイプがある。ここも調べておこう。

山口の本の冒頭が日本語の「数」の概念である。日本語では、現代では「数人」「数杯」「数日」というものは、少ないというタイプがある。しかし、古代や中世までは、数という言葉は「多数の」という意味を持っていた。平安時代徒然草では「あまたの」「おおくの」という意味が与えられているし、日葡辞典では「数日」を「多くの日数」と訳せる Muitos dias と説明している。それ以外にも「数」という言葉がすべて「たくさん」と説明されているという。しかし、次第に少なさを強調するようになったという。

ドイツ語と日本語を訳すことを考えるときに、ドイツ語の mehrere にあたる部分に注目できないだろうか。このような概念が変わるということを見てみるといいのかもしれない。

一方中国語では「三」が多数という意味があるという。ここも日本の漢方医学と医学の問題を複雑にしている。うううむ(涙)