先日は博士課程の学生が最後の章を日本語で書いたものを SPVした。20世紀前半の日本での「所謂脳膜炎」という疾病概念と、実質上そのような名称を用いる優れた分析があり、素晴らしかった。分析の水準は深く、海外の一流誌に掲載されるようになることは間違いないだろう。
「所謂脳膜炎」は英語では so-called meningitisというとのこと。おそらくドイツ語では sogennant だろう。敢えてドイツ語に約すと die sogennante Hirnhautentzündungとなるだろう。この「所謂」という日本語が成立する必要があるありさまを非常に的確にとらえており、確実な向上があった。
そんなことを考えて、今朝の『週刊医学界新聞』を読んでいたら「痔」に関する対談であった。「内科医が知らないおしりのヒミツ」という見出しを見て、「所謂脳膜炎」に近い概念がありそうだったので読んでみたら、いきなり冒頭で提示されていた。著名な先生方が「正確に教えられる医師が極めて少ない」「診療風景を見せながら教えることが非常に難しい」という話をして、「いわゆる痔」が出てくるかと思っていたら「とりあえず痔」だった。患者が「おしりのこれは何ですか?」と問い、内科医が「(とりあえず)痔です」と答えるという。ここ以外での「とりあえず」「わからないけれども」という枠組みが使われている、とても面白い図である。この場面を授業で使ってみようかしら(笑)