烏犀角と19世紀の麻疹

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木下直之先生という非常に面白い先生がいらして、近代日本の身体と芸術に関しての著作などを熱心に読んでいる。木下先生が展覧会をしているのを雑誌で読み、その中で19世紀の麻疹の予防に関する錦絵をパロディした展示があるとのこと。ビデオを観ると麻疹を対象とした作品が非常に面白く、時間を見つけることができたら拝見したい。
 
これはおそらく日文研の宗田コレクションの錦絵をもとにしている。1862年の麻疹大流行の折に作られたものである。錦絵では「烏犀角」の言葉をまとった「麦殿大明神」が麻疹を表象する怪物を踏みつけている。「犀角」はサイの角の意味で、「烏」は黒色であるという意味。一般に烏犀角は「黒いサイの角」の意味で、漢方薬の中では、解毒、解熱としての機能が高いと考えられている。子供の麻疹に対する薬/神様として、烏犀角と描いた広告をまとった、超自然の明神がいるという構図である。だからどこにでもあり、だから特別で神聖な力にすがるという二つの原理がまとわれている。 
 
小野, 蘭山. 本草綱目啓蒙. vol. 531, 536, 540, 552, 平凡社, 1991. 東洋文庫.
小泉, 栄次郎. 和漢薬考. 復刻版 edition, 生生舎出版部, 1972.
伊藤, 恭子 and 内藤記念くすり博物館. はやり病の錦絵 : Nishiki-E, Color Prints of Infections. vol. 4, 内藤記念くすり博物館, 2001. くすり博物館収蔵資料集.