江戸時代の「幾那」(キナ)について

数日前に江戸時代に「キナ」が輸入されていたのかどうか分からないというようなことを書いたが、ふと、『薬物名出典総索引』を使えばいいのではないかと思いついた。これは、内藤記念くすり博物館の開館30周年を記念して出版されたもので、青木允夫・野尻佳与子が編集したものである。江戸時代から明治初期までに刊行された書物122種類に記載されている薬物名を採録したものである。薬物は延べ総数26万5千語が採録されている。CDがついているが、これはうまく利用できなかったので、1000ページを超える紙印刷の索引を見た。以下は、印刷された索引を見る限りの情報である。

 

キナは江戸時代の日本でももちろん知られていた。最も一般的な書き方は「幾那」である。さまざまな形態で用いられ、「幾那丸」幾那散」「幾那酒」「幾那浸」「幾那煎」「幾那丁幾」「幾那皮」などが挙げられている。「幾那」で始まる薬品は、合計で200点ほどの件数があり、江戸時代から明治期までの多くの薬物書に記載があったことがわかる。キニーネはそれより数が少なく「幾尼捏」と書いた件数が3件ほど書かれている。江戸時代の薬物書に書いてあったことは確かである。明治期には国会図書館のデジタルでみたら、主に翻訳書の薬物書に、「幾那」で記載されていた。実際にどの程度使われていたのかはまだ分からないが、キナノキの産地がオランダ植民地のジャワということもあるし、実際に輸入されて使われていたのだろうと想像している。

 

ポイントは、17世紀のヨーロッパで非常な人気であった「キナノキ」から作られた薬である「キナ」は、日本でも「幾那」として薬物書に記載されていたこと。もう一つのポイントは、江戸時代の薬を発見する方法を一つ見つけたということ。

 

 

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