E.A. ポーの死と催眠の短編

Poe, Edgard Allan, “The Facts in the Case of M. Valdemar”, Kindle にダウンロードしたThe Complete Works (無料)で読んだ。10ページ程度の短い短編である。

 

「ヴァルデマール氏の症例についてのいくつかの事実」は、エドガー・アラン・ポーの優れた短編で、医学と催眠術を不思議な仕方で組み合わせている。記述がまるで医学の症例のように的確にヴァルデマール氏の状況を描写しているところが一つのポイントである。

 

それよりも面白かったのが、死と催眠を組み合わせた基本的なアイデアである。ヴァルデマール氏は結核で死のうとしているが、死の直前に催眠術(メスメリズム)を掛けるとどうなるのか。ハムレットの To die, to sleep ではないが、不思議なところをついている。死の瞬間に催眠術をかけると何が起きるのか。普通に生きているのか、それとも、死への経過が催眠によって停止するのか。だとしたら、どのような状態で生きているのか。その場合に数か月たってから催眠を解くと何が起きるのか。確かに不思議な問題を問うている短編だった。