AIDS概説書

必要があって、AIDSの概説書を読む。文献は、Barnett, Tony and Alan Whiteside, AIDS in the Twenty-First Century: Disease and Civilization, 2nd edition (Basingstoke, Hampshire: Macmillan, 2006).

目を通すのが遅れたけれども、さすがに第二版がすぐに出るような書物。包括的で、簡潔で、洞察は深い。発展途上国のAIDSについての社会科学・現代史系の授業の準備をするときに、まず参照しなければならない一冊だと思う。特に開発へのインパクトを論じる。主眼は開発経済学だけれども、自然科学の部分も必要なことはきちんと書いてあり、疫学の部分も納得できるようにきちんと書いてあるように私には思えたけれど、昨日記事にした、戦闘的疫学者のピサーニ先生はなんと言うのかな(笑)。

とても面白かったのが、HIV/AIDSの蔓延のメカニズムが、アフリカの各国において、それぞれ大きく違っていることを丁寧に説明した部分だった。HIVは、それ自体としては「弱っちい」(笑)ウィルスなのに、きわめて多様なルートを通って世界中に広まったことは知られている。北米の同性愛、日本の薬害(最近は圧倒的に同性愛の感染が多い)、中国の売血、東欧の薬物乱用、東南アジアの売春と、それぞれ感染経路に違いがあったのは有名だけれども、アフリカはなんとなく一緒かと思っていたので、蒙を啓かれた。