クイズ・『気候と文明』

必要があって、20世紀前半に一世を風靡した地理学者・気候学者のエルズワース・ハンティントン(Ellsworth Huntington, 1876-1947) の Climate and civilization の翻訳『気候と文明』を読む。翻訳は間崎万理のもので岩波文庫から出ている。もとはといえば、中外文化協会から大正11年に初版が出たものだけれども、昭和13年に、おりから気候学の重要性が高まったのに応じて、岩波文庫に収録された。

これは・・・原著者の嗜好にあわせて、クイズ方式で行きましょうか。著者が第二章の冒頭で問うている質問です。(現代言葉遣いに改めてあります。)

「ここに、まったく条件が同じ無人の地がエジプトに二つあったとする。その一つは、黒人をもって満たされ、他の一つは、チュートン人をもって満たされていたとする。これらの居住者は、両人種のうちの普通人であって、同一の宗教・教育・政治・社会制度・発明を享有している。そして、どちらの地域も、外部からの移民は一切受け入れないとする。そのときに、どちらの人種が最もよく成功するであろうか?」

(「チュートン人」というのは、「ゲルマン民族」というくらいの意味だと思います。当時、最高の人種であると考えられていました。黒人は、その反対に、最低の人種であると考えられていました。)

この問いの立て方自体、人種主義そのものなのですが、それは脇において、ハンティントンがどう答えているか、そしてそれはどんなロジックなのか、考えてみると少し面白いと思います。