ここで説明するのは複雑すぎる事情があって(笑)、映画『ガチ☆ボーイ』を観る。2008年の作品で、小泉徳宏の監督、主演は佐藤隆太。
交通事故の後遺症で高次脳機能障害になり、記憶する能力が損なわれ、眠るとその日の出来事をすべて忘れてしまうという障害を持つようになった大学生が主人公。交通事故以前の記憶は残っているが、それ以降のことを覚えられない。朝目覚めると、人生を日々新たに出発しなければならず、友人の名前など何から何までノートにメモして新たに覚えなければならない。(そのすべては翌朝には忘れるのだが。)そういう障害にかかった主人公が、学生プロレスに人生をかける決意をする。障害のため、精神は記憶しないが、身体は痛みを記憶しているし、あざが残ればそれが昨日という時間を生きた証になるというのが、プロレスを選んだ理由である。
設定としてはかなり苦しい気もするけれども、そこはフィクションだからまあいいことにする。記憶と人格の同一性の関係という、現在の人文社会自然科学の学問の焦点を取り上げ、それをネタにして青春コメディを作ろうという狙いはすごく面白いのだけれども、問題をもっとシャープに描くこともできたような気がする。大学のプロレスサークルの「イタさ」を描く部分や、素人っぽい芝居なんかが邪魔をしていたように思う。