精神疾患のクロニシティ

同じく、このフランスの実力者の論文。文献は、Henckes, Nicolas, “Reshaping Chronicity: Neuroleptics and the Changing Meaning of Therapy in French Psychiatry, 1950-1975”, forthcoming in Studies in History and Philosophy of Biological and Biomedical Sciences.

「慢性性」という概念で、20世紀後半の精神医療を再検討した、非常に優れた論文。脱施設化や向精神薬革命という、概念と言うよりも現象を記述しただけのもので戦後の日本の精神医療をイメージしていた私にとっては、非常に大きな示唆になった。クロニシティというのは、疾病の継続というバイオメディシンの問題でもあり、患者のケアをどうするかという行政の問題でもある。それは、患者の人生の中で治療をどのように意味づけるかという新しい問いを発生もさせた。ほぼ同じ議論が、日本でも起きていて、それと同時に、精神病の病床の増加という全く違う現象を発生させている。 この著者による二本の論文は、私たちがみな読まなければならない。 たぶん、精神科医たちも、読んだ方がいいかもしれない。