国家と家族と精神病院

必要があって、精神病院のヒストリオグラフィの「新しい潮流」を示唆した古典的な論文の一つを読みなおす。文献は、Finnane, Mark, “Asylums, Families and the State”, History Workshop Journal, 20(1985), 134-148.

私の学生・院生時代は、Past and Present やHistory Workshop Journal といった左翼系の歴史雑誌の全盛時代だったと思う。(今でも、わたしが知らないだけで、かつてのようなヴァイタリティに満ちた雑誌なのかもしれない。)これは、イデオロギーとしての新左翼がスリリングということもあったけれども、むしろ、そこから歴史学の新しい方法と視点と対象が現れていた。そこでは、フーコーや反精神医学の影響があって「精神病院の歴史をどうとらえるか」といった問題が熱気とともに語られていた。この論文は、いまはカナダの政治家のマイケル・イグナティエフが監獄などの収容施設について書いたエッセイを批判して、アイルランドとオーストラリアの精神病院の資料を使って仕事をしてきたフィンネインが新しい精神病院史の方法をスケッチしたものである。