女性の「主観的」な病気の知覚

Rice, Margery Spring, Working-Class Wives: Their Health and Conditions (Harmondsworth: Penguin Books, 1939)
労働者階級の女性の健康を高める運動家たちが中心になって1930年代にイギリスで行われた健康調査の報告書を読む。イギリス各地でインタヴューをして集めた1250人の女性の生活と健康・病気についての記録をまとめたものである。客観的な情報だけでなく、インタヴューされた女性が語った言葉がそのまま使われて書かれている報告書である。私も同じ時期の日本の健康調査のリサーチの準備を進めていることもあって、とても面白かった。

その中から一つ。あなたがかかっている病気は何か?という問いに対する主観的な答えを集計したものがあって、その第一位は「貧血」である。二位以下は、頭痛、便秘/痔、歯痛、リューマチ、産婦人科系の病気の順であった。

これはとても面白い。「滝野川健康調査」によると、ほぼ同じ時期の東京の女性たちの間では、貧血などという自覚的な症状はない。この資料の研究は、小さな論文を書いただけで、それから何もしていないけれども、とっかかりが得られた。