書評―ウェストマンとシェイピン&シャファー

Wootton, David, “Traffic of the mind: review of Robert Westman, The Copernican Question and Steven Shapin and Simon Schaffer, Leviathan and the Air-Pump, new edition.” Times Literary Supplement, Oct 21 2011.

今日はどちらかというと無駄話。

学者にはいろいろなタイプの仕事がある。学会発表をすること、学術誌に論文を書くこと、書物を書くこと、授業をすること、教科書を書くこと。これらの仕事は、基本はいずれも、研究をして、考えたことを理論や概念の枠組みで整理して、クリアに説明することである。この三つがいずれも高い水準で達成されて、いい仕事ができる。いつもうまくいくわけではないし、私自身はうまくいかないことが多くなっているけれども、原理としては、これでいいと思っている。

 学者がする仕事で、書評という仕事もあるけれども、これは、論文を書いたりする仕事とは大きく違う。論文などは自分のストーリーを語ればいいのに対し、書評は、一冊の本、あるいはその著者との対話であり、同時に、その対話を第三者に読ませるものである。その点で、学会やセミナーのディスカッションと似ている。うまい人もいるし、下手な人もいる。これがうまくなくてもいいと思っている学者は、きっと、ディスカッションや書評がうまい学者が周囲の学生や学者に対して何を達成できるのかを経験したことがない、恵まれない人生を送ってきた人だと思う。

 上手な書評を書くためには、その「こつ」や「呼吸」というべきものを知らなければならないから、私はできるだけ多くの書評を読む。学会誌の書評は専門外のものでもかなり読む。それ以外に、いわゆる書評誌、具体的には、Times Literary Supplement と、London Review of Books を良く読む。New York Review of Books もいいと聞いたことがあるけれども、これは自分で購読したことはない。この三つの中では、私はLRB が一番いいと思うけれども、それは好みの問題だと思うし、今は、理由はよく覚え栄ないけれども(笑)、TLSを購読している。

  そのTLSに、科学史の主題で、読み応えがある長い書評が掲載された。二冊の本を書評していて、一冊は、ウェストマンのコペルニクスの地動説論で、これは、クーンが1957年に書いた『コペルニクス革命』に対して、最初の構想から40年かかって執筆された「長いコペルニクス革命」論だという。もう一冊は、過去30年の科学史研究の最大のインスピレーションであり範型であったシェイピン&シェファーの『リヴァイサンと空気ポンプ』である。基本、このタイプのヒストリオグラフィは、「その役割を果たし終えた」ということである。ウェブ上で全文読める。