ゲーテ『ファウスト』

必要があってゲーテファウスト』を読む。岩波文庫の古い訳の二巻本。私の記憶に間違いがなければ、この有名な作品を実際に読むのは生まれて初めてだと思う。

私が知っている他のファウストに較べて、筋が複雑というか、スケールが大きなストーリーだった。「第一部」のグレートヒェンのエピソードはドイツ語の初等読本か何かで読んでなんとなく知っていたけれども、第二部でギリシア神話の神々や英雄や妖怪や哲学者や美女を大動員した展開になるのは知らなかった。解説では、そのせいでストーリーが散漫になったと批判的に書いてあったけれども、私は大河ドラマ風で好きだった。

どこかで、ゲーテファウストのモデルはパラケルススであると読んだのが、この本を読もうと思い立ったきっかけである。パラケルススについても、ファウストについても何も知らない人間が言うことだと思って聞いていただきたいのですが、ゲーテが作り出した「ファウスト」という登場人物と、パラケルススは、かなり違う人物で、自然魔術を究めようとしているということを除けば、共通点は少ないという印象を持ってしまった。パラケルススは、野卑で、敬虔で、自然界という神の署名の神秘を探求した孤独な男であるのに対し、ファウストは、高貴で自己と女性の美と愛を追求している。やっぱり読みが浅いのかなあ。