北米の医学史

Bliss, Michael, The Making of Modern Medicine: Turning Points in the Treatment of Disease (Chicago: University of Chicago Press, 2011).

19世紀末から20世紀前半にかけて、アメリカ合衆国とカナダの医学研究が急速に進展する。北米地域は、それまで医学研究においてはっきりと後進的だったが、世紀転換期に始まった改革の中で、ドイツを除いたヨーロッパ諸国と互角の業績を上げることができるようになった。そのありさまを、医師のオスラー、脳外科のクッシング、そしてトロント大学のインスリンの発見の三つのエピソードを通じて語るという仕掛けの本である。

冒頭は1880年代のトロントにおける天然痘の悲惨な流行で始め、末尾に1920年代のインシュリンの発見の勝利で締めくくっている。思想としても方法論としても、非常に古色蒼然とした医学史であるが、オスラー、クッシング、インスリンについて中程度の詳しさの記述が必要なときには、便利な本である。私は読んでないが、この著者の『インスリンの発見』は優れた著作らしいので、借りて読んでみることにした。