しばらく前に論文を頂いて紹介した香西さんが研究会で「人面瘡」の話をしてくださることになって、課題図書を何点か指定された。そのうちの一冊を読む。文献は横溝正史『人面瘡』(東京:角川文庫、1995)
「ネタバレ」と言うのだろうか、推理小説の謎解きを書いてしまうのはいけないので、内容は書かない。代わりに書物と画像の紹介。言うまでもなく、人面瘡に近いものがヨーロッパの医学の伝統にもあるのは有名である。パークとダストンの名著で有名な「モンスター研究」の中で盛んに研究されている。私は最近の研究動向は全く追いかけていないが、先天性障害論などとも絡んだ重要なトピックだから、きっと膨大な研究の蓄積ができているのだろう。それを反映してか、初期近代のモンスター論の古典のアンブロワーズ・パレの著作は少し前に英訳されてシカゴ大学出版局から出ている。その中から、画像を二つ。お腹に顔がある男は「成人になるまで生きながらえて、お腹の頭はもう一つの頭と同じように栄養を摂った」という。