W.F. バイナム『医学の歴史』を翻訳し、丸善出版の「サイエンス・パレット」のシリーズから刊行しました。オクスフォード大出版局の Very Short Introduction の一冊で、コンパクトに医学の歴史を解説した傑作です。古典古代からの長い時期をカバーしていますが、焦点は、著者の専門である19世紀から21世紀までの近現代となっています。
新書サイズの医学史入門の書物としては、もっとも基本的・標準的で、なおかつ、5つの類型論の中で展開しており、インスピレーションに富むものになっています。医学系はもちろん、理系と文系の双方の学生・大学院生など、医学史のことを何も知らない読者でも、楽しんで読むことができる著作です。類書のジャンルでは、これを超える著作は、当分の間は書かれないだろうと考えています。
表紙カバー(いわゆる<そで>)の文章と、原著者・訳者紹介をアップロードしますので、ご参考までに。
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医学の長い歴史において,臨床、書物、病院、共同体、実験室の5つの類型を考えることができる.これらの類型は古代から19世紀まで年代順にあらわれて,層をなすように重なって現代の医学を形づくっている.
古代ギリシャ・ローマ人が作り上げた臨床の医学とはどのようなものなのか.中世に発達した書物の医学の特徴はなにか.フランス革命期のパリでおきた病院の医学はどのような意味で革命的だったのか.19世紀のコレラなどの感染症と近代社会が生んだ貧困の問題に直面して,国家はどのように共同体の医学をつくりあげたのか.実験室の医学は,どのようにして医学を変革したのか. そして,20世紀以降の医学において,それぞれの類型はどのように発展して共存しているのか.本書はこの類型的な把握にもとづいて,医学の長い歴史を簡潔に解説した書物である.
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原著者紹介
William Bynum(ウィリアム・バイナム)
ロンドン大学名誉教授.イェール大学医学部, ケンブリッジ大学を経て,1973~1996年までロンドン大学ウェルカム医学史研究所の所長を務める.専門は医学史.著書にScience and the Practice of Medicine in the Nineteenth Century (Cambridge University Press, 1994), Great Discoveries in Medicine (Thames & Hudson, 2011)《邦訳『Medicine:医学を変えた70の発見』(医学書院, 2012)》,A Little History of Science (Yale University Press, 2013)《邦訳『歴史でわかる科学入門』(太田出版, 2013)》などがある.
訳者紹介
鈴木晃仁(すずき・あきひと)
慶應義塾大学経済学部教授.東京大学教養学科卒業. ロンドン大学ウェルカム医学史研究所PhD, アバディーン大学トマス・リード研究所などを経て現職.専門は医学史. 著書にMadness at Home (University of California Press, 2006), Reforming Public Health in Occupied Japan (Routledge, 2012, 共著) などがある.
鈴木実佳(すずき・みか)
静岡大学人文社会科学部教授.東京大学教養学科卒業. ロンドン大学PhDなどを経て現職.専門はイギリス文学.著書に,『セアラ・フィールディングと18世紀流読書術』(知泉書館, 2008),訳書に『清潔の歴史―美・健康・衛生』(東洋書林, 2010)などがある.
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