Entries from 2015-01-01 to 1 year

フィールド・ワーク / インタビューの教本

Briggs, C. L. (1986). Learning how to ask : a sociolinguistic appraisal of the role of the interview in social science research. Cambridge, Cambridge University Press. 学術振興会に新しい共同研究が採択された。医学史の現代的な意義を探る3年間…

アシスタント募集(英文書評依頼)

アシスタントを募集いたします。仕事は英文誌の書評編集の補助です。仕事のかなりの部分、あるいはうまく組織すれば、すべてを自宅で行うことができると思います。 私は2012年から英文誌 Medical History の書評部門の編集長をしており、あと2年ほど継続いた…

明治日本は古代ギリシアに似ていたか?

Weston, W. and 勉. 水野 (1996). 日本アルプス再訪. 東京, 平凡社, 1996.9. ウェストンは英国国教会の伝道師で、日本近代登山の父と言われ、上高地には彼のレリーフがある。日本には3回滞在し、1888-1895年、1902-1905年、1911-1915年である。本書は邦訳…

大正期のメスメリズム小説

吉田絃二郎「狂人となるまで」『吉田絃二郎全集 第十巻 戯曲集』(東京:新潮社、1932), 415-451. 吉田絃二郎は大正期から昭和の戦後にかけて活躍した人気作家である。昭和2年(1927)に投票で選ばれた『日本新八景』の上高地についての文章だったか、『戦…

ベル・エポックの動物病院

週末なので少しのんびりした記事を書く。 カレンダーのイラストが、犬と猫が女性に愛らしく甘えているアール・ヌボーの作品だった。サインを見ると、スイス生まれでフランスで活躍した画家のテオフィーユ=アレサンドル・スタンラン Theophile-Alexandre Ste…

慶應義塾大学・大学院(社会学研究科)・学期末英語(または非母国語)セミナー

昨年度に実施して教育効果が高かった「英語(または非母国語)セミナー」を、今年度も実施します。春学期のまとめということで、少し時期は遅れましたが、大学院に参加した若手研究者たちの報告会です。ついでに、私自身と、オクスフォードから来日中のポス…

同窓会報より

静岡県立清水東高の同窓会報に、記憶されなければならない名文があったのでメモ。 「清水東高は、関東大震災の起こった大正十二年に、静岡県立庵原中学校として設立された。当時は茶畑や梨畑に囲まれた田舎にあって、周りにあった文化的施設は屠殺場と火葬場…

不妊治療と16世紀の喜劇(マキァヴェッリ)

マキァヴェッリ「マンドラーゴラ」脇功訳、『マキァヴェッリ全集 4』岩倉具忠代表訳者(東京:筑摩書房、1999), 4-54. マキァヴェッリが16世紀初頭に書いた喜劇。イタリア本国では名作として名高く、欧米では現在でも舞台で上演され映画化されているとのこ…

上高地のコサメビタキ sp

上高地に二泊三日で行ってきた。初めて行く土地で、色々と楽しいことがあり、同時に深く思うことが多かった。 三日間、大正池と明神池の間を歩きながらネイチャー・ガイドのお話を聞いたり、鳥を見たりする、何も起きないけれども充実した時間を過ごした。ネ…

18世紀の診療書簡集のウェブ上データベース 

18世紀の後半のエディンバラ医学校は、イギリス内はもちろん最高の医学教育機関、ヨーロッパでも有数の医学教育の中心であった。そこの教授で著名な医師がウィリアム・カレン(1710-1790) であり、彼については数多くの資料が残っているが、その中でももっと…

食養生と感染症の防止―ルドルフ・フィルヒョーの意見と消費社会の問題

食養生と感染症の防止についての概説的な性格を持つ論文をまとめている。あと少しで先方に送ることができる。そこでつかった小ネタと理論的なメモ。 著名な病理学者のフィルヒョウが、食養生に注目する視点を嘲笑して、何を食べろとか何を食べるなとかいう話…

『中国の科学と技術 イエズス会士書簡集』矢沢利彦編訳(東京:平凡社、1977)

『中国の科学と技術 イエズス会士書簡集』矢沢利彦編訳(東京:平凡社、1977) イエズス会士が中国の科学と技術、特に医学について報告した書簡を選んでまとめ、それを翻訳した資料集。非常に便利なもので、もっと早く入手しておけばよかったと思う。個別の…

精神病患者の絵画作品と「素朴絵」の関係

矢島新『日本の素朴絵』(東京:パイ インターナショナル, 2012) 須藤弘敏・矢島新『かわいい仏像 たのしい地獄絵 ―素朴の造形』(東京:パイ インターナショナル、2015) いま昭和10年付近に精神病院に入院した患者が描いた絵画を分析しようとして、関係が…

日野原重明の診療記録の改革論―1973年

昭和戦前期の王子脳病院の症例誌がどのようなシステムで記入されているかを考えるために、1960年代から70年代の診療記録の改革の重要な書物を読んだ。今は別の脈絡で有名な日野原重明が、40年前には医療の記録の根本について、論争と革命の書物を書いていた…

石黒忠悳と中江兆民の肺

石黒忠悳(1845-1941)は陸軍軍医で軍医総監をはじめ要職に就いた人物である。医学的な業績については、日清・日露戦争における兵士の脚気の流行において、陸軍の被害を拡大することになる方法を示唆したため、医学史家の評価は低く、山下政三は『鷗外森林太郎…

「春信一番!写楽は二番!」 フィラデルフィア美術館の浮世絵コレクション

静岡市美術館の展覧会に行く。実佳が静岡大学の教員ということで内覧会に招待され、その同伴者という形でお邪魔させていただいた。 展覧会は、フィラデルフィア美術館の浮世絵コレクションから精選されたものである。浅野先生のご講演を伺い、どう数えたのか…

商品としての血液の歴史

2nd: ダグラス・スター『血液の物語』山下篤子訳(東京:河出書房新社、1999) これまで存在を知らなかったが、医学史の研究者はもちろん、医学・科学系のジャーナリストは必ず読まなければならない書物。学部生向けの授業であればリーディングリストに入れ…

医学史の教科書の構成様式について

Duffin, J. (1999). History of medicine : a scandalously short introduction. Toronto, Toronto U.P. 医学史の教科書や標準的な歴史書は、誰を読者にして、その読者に何を伝えたいかによってその構成が変わってくる。大きく分けると、医学部や看護学部な…

流行病の歴史辞典

Kohn, G. C. (2008). Encyclopedia of plague and pestilence : from ancient times to the present. New York, Facts On File ; [London : Eurospan, distributor]. 古代から現在までの世界各地の流行病の歴史を700件のエントリーで説明している辞典。とて…

高校時代の同窓会に出て

今日の記事は、いつも私が書く記事とはまったく違い、それどころか書かないようにしてきた個人的な性格を持つものだが、これは書いておく。 週末に、高校の同窓会に出た。卒業してからはじめてだから、30年以上もたって開かれた同窓会である。 私が卒業した…

19世紀イングランド精神病院の院長の日記―全文画像化です!

ウェルカム図書館が所蔵する、イングランドの精神科医だったジェイムズ・アダムズ(1834-1908) の日記が、全文画像化されたファイルです。とても読みやすく、PDFで300ページほどのファイルをダウンロードもできます。アダムズは1500人ほどの患者を抱えた公立…

国文研フォーラム 西村慎太郎「東日本大震災で被災した医学書と近世在村医」のおしらせ

アーキビストの松崎さんがFBに投稿された情報です。 第39回 国文研フォーラム日時:平成27年9月16日(水)15:30~17:00(開場15:00)場所:国文学研究資料館 2階 オリンテーション室※参加無料、予約不要。※席に限りがあります。ご来場者が多数の…

男女別喫煙率国際比較

本を探している時に、OCED Health の古いパンフレットが出てきて、それを眺めているうちに男女別喫煙率が面白かったので、新しい統計を解説したサイトを見つけてメモ。 北欧と英語圏の国、具体的にはスウェーデン、アイスランド、デンマーク、ニュージーラン…

視覚文化論と医学人文学

色々な仕事を並行して進めていて、それぞれに滞っているが、一つ、新しい毛色の違った仕事を考えている。それが、視覚文化論との関係、それも現代まで繋ぐことができる視覚文化論の関係で医学史の仕事を一つできないだろうかということである。その関連で、…

ロボットによる高齢者向けの精神医療ケア―フィールドワークを希望する学生がいます

カナダの医療人類学の大学院生が、日本の老年精神医療におけるロボットを用いたケアについてフィールドワークを望んでいます。この種のケアを実践している病院や医師などをご存じで、この大学院生と一緒にお仕事したい方、興味ある方など、私にご連絡いただ…

松岡秀明「ハンセン病と短歌―映画<小島の春をめぐって」

松岡秀明さんに論考「ハンセン病と短歌―映画<小島の春をめぐって」を頂いた。『小小島の春』は、長島のハンセン病療養所に勤務し、ハンセン病患者の医療に携わった医師、小川正子の回想的な小説である。1938年に出版されてすぐに大ベストセラーになり、22万…

アジア太平洋戦争中の精神病の詐病―小説「にせきちがい」(1948)

浜田矯太郎「にせきちがい」『戦争×(と)文学 第11巻 軍隊と人間』(東京:集英社、2012)、 399-445ページ。原作は1948年の『勤労者文学』に掲載。 集英社から全30巻で刊行された『戦争×(と)文学』の第11巻『軍隊と人間』に掲載されている短編小説。主題は、…

酒呑みの父親を持つ子供はどうして共産主義者になるか(笑)

諸岡存の評論をもう一つ。 諸岡存「優良児と劣等児の観察」『尋一母子講座 第二巻』(東京:非凡閣、1938), 335-362. 同じ諸岡の評論。子供の教育に関して昭和13年に出版された「家庭教育の指標」シリーズの第二巻。優良児と劣等児について色々と雑駁なこと…

昭和戦前期の医療の危機とその解決法について

諸岡存・島影盟『医道革新論―医療制度と医療費を中心に』(東京:大東出版社、1937) 諸岡存(もろおか・たもつ)は医師で九州大学の精神科の助教授であった。夢野久作が『ドグラ・マグラ』の準備のために、九大の精神科を訪れては精神病について学んでいた…

16世紀の梅毒患者の自己認識

オットー・フラーケ『フッテン―ドイツのフマニスト』榎木真吉訳(東京:みすず書房、1990) ウルリッヒ・フォン・フッテン (Ulrich von Hutten, 1488-1523)はドイツの学者・詩人・宗教改革者。医学史では、梅毒にかかって1519年に『グアイヤクノキの薬とフラ…