色々な仕事を並行して進めていて、それぞれに滞っているが、一つ、新しい毛色の違った仕事を考えている。それが、視覚文化論との関係、それも現代まで繋ぐことができる視覚文化論の関係で医学史の仕事を一つできないだろうかということである。その関連で、ダラム大学の医療人文学のサイトに掲載された、視覚文化と医療人文学のワークショップに関する記事を一つ読んだ。
医学人文学を<視覚文化論> visual culture との連携で考えるときに、対比されているのは物語 narrative である。過去20年ほどの間、患者と医者が交わす言語が医療人文学の中心的な概念であった。医学史の領域でいうと、バーバラ・ドゥーデンの『患者の皮膚の下』が医者と患者の対話を主軸に身体や病気を検討した重要な作品で、彼女と同時期の一連の重要な仕事はさまざまなタイプの観察や記録や解釈を論じたが、そこには言語を軸に考える仕掛けがあった。私自身もそのような方向の仕事をしてきたし、これからもするだろう。しかし、書かれた言葉、話された言葉を軸にするのではなく、視覚文化を軸にしたらどのように医学史を考え直すことができるのかということについて、少し考えて仕事をしてみよう。