酒呑みの父親を持つ子供はどうして共産主義者になるか(笑)

諸岡存の評論をもう一つ。

 

諸岡存「優良児と劣等児の観察」『尋一母子講座 第二巻』(東京:非凡閣、1938), 335-362.

同じ諸岡の評論。子供の教育に関して昭和13年に出版された「家庭教育の指標」シリーズの第二巻。優良児と劣等児について色々と雑駁なことを書いているという印象。いくつか面白いことを書いているのでメモ。

後天性早熟児は、成人ばかりの家庭にできた子供で、大人臭くなってしまう子供である。年取った祖父母に育てられた子供は論外で、子供がそのまま老人の態度を真似て、火鉢の傍らに座っては茶菓子をつまんだり世間話をする。利口なことを言うので、以下にも利口に見える。花柳の巷に育つ子供は、外界との交渉が少なく、見るもの聞くものすべてその方面のことばかりであるから、性の方面に早熟する。かつて文壇の彗星のごとく騒がれた青年文士島田清次郎は、まさしくこの種の早熟児であっただろう。

 

親の疾患の遺伝を考えると、梅毒の親を持つとそれが遺伝して、白痴、痴愚、軽痴、不良児、癲癇は直接親の梅毒を原因とする。一方で結核児童は、利巧で大人しく優しい。しかし、結局学校の成績は落ちてくる。根気が続かないからである。

 

一番面白いのが酒。酒客の子供は、親がふしだらで不規則で倫理的に頽廃堕落しているから、子供は内心父親を軽蔑していて、長上を何とも思っていない。学校に行っても教師を尊敬しない。社会は下等な人間でできていると思い込んでいる。家庭で酒飲みの父親に母や家族が常に反抗するのを目撃しているから、どこででも長上に反抗する。共産主義者や社会主義者になるのは、酒客の子供が多い。