古典古代の「徴づけられた身体」

昨日の古典医学の深くて広い鳥瞰にも舌を巻いたけれども、同じ著者が同じ本に「徴づけられた身体」についても、水準が高い章を提供していた。大いに尊敬する。文献は、Holmes, Brook, “Marked Bodies: Gender, Race, Class, Age, Disability and Disease”, in Daniel H. Garrison ed., A Cultural History of the Human Body in Antiquity (Oxford: Berg, 2010), 159-183.

「徴づけられた身体」というテーマは、近現代の障害の歴史につなげようとする主題である。この主題で古典古代について書くことになり、しかも、女性の問題は「性」の章でかなり触れられているというのは、かなり厳しいと思うのだけれども、女性にも触れながら、奴隷と外国人の問題に触れながら、読み応えがあるものになっている。素材としては、医学、道徳哲学、身体に刻印(刺青など)を押すこと、アリストテレス派の観相学、演劇で役者が役に影響されることなど、多様な分野から取っているけれども、緊密な構成を取っている。自分の専門から少し離れた問題設定だと思うけれども、そういうときには、このような書き方をすればいいんだ。まだ若い学者だけれども、とても参考になった。