必要はなかったけれども、純粋な好奇心で、北海道でしばしば観察された、かぼちゃの食べすぎによっておきる皮膚の黄変についての医学研究を読む。もともとは博士論文だったという。文献は、安斎真篤「南瓜<カロチノーゼ>の本態に就て」『北海道医学雑誌』vol.4, no.3 (1916), 253-283.
もともとはベルツが観察して「柑皮症」と名付けた、「過剰な蜜柑食 reichlichen Mikangenuss のために皮膚が着色する病気」である。似たような病気が、かぼちゃ、のり、にんじんなどでも観察されることがわかり、これらは色素のカロチンと関係があることからカロチノーゼと呼ばれた。この論文の新しい点は二点。ひとつは、これまで臨床的な観察に頼っていたことに動物実験を導入したこと。ネズミやイエウサギを使って実験をしている。第二に、動物にかぼちゃを大量に食べさせるのは難しいこともあって、精製したカロチンを使っていること。そのためにはかぼちゃからカロチンを取り出している。動物実験と化学操作を使った研究である。人体実験もしていて、かぼちゃをたくさん毎日連続的に食べさせると、数日すると皮膚が黄変し、かぼちゃ食を中止すると、すぐに黄変はひいていく。
結論としては、これは、カロチンが汗とともに排泄されて、そこから皮膚を染めるのだろうとのこと。だから、汗をたくさんかく動物を使うと実験がうまくいくし、また、この病気には個人差が強く出ることが知られていたが、多汗症の人は、この病気になりやすい。