18世紀のライブラリアンの日記

ちょっと書棚を整理していたら、いつどこで買ったのかはもちろん、なにを思ってこんな本を買ったのか、記憶にない本が出てきた。Wanley, Humphrey, Diary of Humphrey Wanley, 2 vols, ed. By C.E. & R.C. Wright (London) The Bibliographical Society, 1966). という本である。18世紀のイギリスの貴族で、文芸のパトロンであり書籍や手稿の収集家として名高いオクスフォード伯に仕えた人物の日記である。どんな本を誰から買った、どんな手稿を手に入れた、本や手稿を誰に見せた、というログが淡々と書いてある日記である。とても立派な青い布で装丁してある二巻本で、サイズも大きい。古書のカタログで魅力的な言葉で紹介されていて、ついふらふらと買ってしまったのかなあ。

しかし、冬休みのひととき、学問好きの貴族がせっせと書物や手稿を集める様子を眺めているのはうれしかった。この時代は、だいぶ以前だけれどもリサーチをしたことがあるので、歴史上の人物の見当もだいたい付いているから、「知り合い」が現れるのもよかった。オクスフォード伯が、ある医者に、どこかで手に入れた薬物学の手稿を見せていたけれども、ルネサンス人文主義医学の時代には、こうした行為が医学の進歩の原動力で、そのパターンは18世紀になってもそのまま続いていたのだろうな。実験と観察という新しいベーコン流の進歩の原動力も発見されていたのだろうけど。