土井珈琲の6月号の案内を読んでいて、コーヒーの原種の名称が「ゲイシャ」であることを知り、まさか日本の「芸者」にちなんだ命名だろうかと思って調べたら、そうではなく、エチオピアの村「ゲシャ」(Gesha) にちなんでいるとのこと。ただ、英語のスペルで Geisha が採用されているのは意味があるのかもしれない。2004年にパナマのエスメラルダ農園がゲイシャの栽培と本格的な出荷に成功した。史上最高の額で落札され、一杯2,000円以上の価格で提供したカフェもあったという。
面白い点は、この原種の特徴についてである。もともと、原種のコーヒーは気候の変動や病毒にことさら弱い。現在生産されているコーヒーのほとんどは、品種改良によって人工的に生み出されたもので、強靭なものである。しかし、このような人工的なコーヒーの生産は、原種ではないコーヒーを生産する近代に起きた現象である。
コーヒーの原種がいつ飲まれていたかはよくわかっておらず、エチオピアでコーヒーの実を食べたヤギの行動を観て云々とかいう話も逸話である。11世紀にアル・ラージーが記録し、1500年近辺にはアラビア半島で飲まれている。もともと qahwoh というスペルで、これはワインの意味。イスラムのスーフィー派が、宗教時の儀礼を理解してワインが供される場で出すことに気づいたからという説があるとのこと。これは、カフェインが持つ特質のおかげで、起きて祈りに捧げる時間を延ばすことができることと関係あるとのこと。この部分の記述は、栄西『喫茶養生記』が記す茶の素晴らしい覚醒的な効果にも似ている。
Kiple, Kenneth F. and Kriemhild Coneè Ornelas. The Cambridge World History of Food. Cambridge University Press, 2000.
Davidson, Alan et al. The Oxford Companion to Food. 2nd ed. / edited by Tom Jaine edition, Oxford University Press, 2006.
古田, 紹欽 and 栄西. 喫茶養生記. vol. [1445], 講談社, 2000. 講談社学術文庫.