20世紀初頭の老齢者差別

Gruman, Gerald J. editor. The "Fixed Period" Controversy : Prelude to Ageism. [S.l.]: Arno, 1979.

ウィリアム・オズラー(William Osler, 1849-1919) は、現在のカナダ出身で、19世紀末にアメリカの医学を大きく進歩させた偉大な医師である。ことに、1890年代にボルティモアのジョンス・ホプキンス大学にドイツの大学の医学部の優れた教育と研究の方法を導入して大成功させて、アメリカが医学においても大きく進歩する方向を定めた。しかし、1905年にはオクスフォード大学の欽定教授として招聘され、ホプキンスを離れることになった。その時に行ったのが The Fixed Period という表題の講演である。このタイトルは、イギリスの作家のアンソニー・トロロープが1882年に刊行したディストピア小説の表題を借りたものである。小説は私はまだ読んでいない。気がついたら、トロロープの小説はまだ一冊も読んでいない。うううむ。

意外なことに、オズラーの退職講演は、抗議の嵐を巻き起こした。ホプキンスの研究室には抗議の手紙が殺到したという。ちなみに、手紙のほとんどはオズラーに読まれないまま、秘書が処理したとのこと。抗議の理由は、ホプキンスを退職するオズラーが、退職すべき年齢に関して、「真実」を話したからである。男性は40歳を過ぎると若いころと比べると役立たずになっている、60歳を過ぎると全くの役立たずになっているという部分である。ちなみに、女性はこの時代にはもともと仕事をしないから、オズラーにとってはどうでもよくて、60歳を超えると、豪華な装身具をつけ、帽子をかぶって、肩掛けをまとっていると、同性の人々への影響力の絶頂期であるといっている。おそらくジョークだと思うけど、何がどう面白いのかはよく分からない。