19世紀後半の男性同性愛者の自伝のコレクション

Peniston, W. A. and N. Erber (2007). Queer lives: men's autobiographies from nineteenth-century France.  Lincoln ; London, University of Nebraska Press.
                
19世紀フランスの同性愛者の自伝を8編ほど集め、編集して英語に訳した非常に便利な著作。2007年に刊行されたが、私が見落としていたテキスト。ゲイの歴史におけるフランスの19世紀という枠組みと同時に、精神疾患の患者の物語とも捉えられる。フランス関係の医学書や論文を集めるという仕事が、色々な理由で慶應日吉だと難しい。東大本郷だとできるのかもしれない。現在では難しくなっているのかもしれない。
 
8点のうち、1つは実在の人物の自伝からの抜き書き、もう一つはエミール・ゾラにイタリアから送られてきた自伝、そして6点は精神科の教科書などの症例の記録からピックアップされた患者の自伝である。実在があり文学があり医学があるというのは、中村古峡夢野久作を思わせる世界である。精神科の教科書は、シャルコー、マニャン、タルデューなど、非常に有名な精神科・神経科の医師たちからとられている。とにかく読んでおく。