『十二支考』「犬」へーよいお年をお迎えください

原稿の初稿を皆さまに送る仕事が終わり、今年の仕事をおしまいにします。今年は、色々な新しい仕事が出来ました。これからしばらく『十二支考』の「犬」の項目を読みながら、年の瀬に何かをつまみながらお蕎麦をいただきます。皆さま、よいお年をお迎えください。

ロンドン衛生熱帯医学校の校章について

Wilkinson, Lise, and Anne Hardy. Prevention and Cure : The London School of Hygiene & Tropical Medicine : A  20th Century Quest for Global Public Health. Kegan Paul, 2001.
 
ロンドン衛生熱帯医学校に関するモノグラフにもう一度ざっと目を通す。ふと気がついたのがその校章である。これは古代のコインから20世紀にデザインされたものとのこと。コインは466BCEにシチリアで鋳造されたものが原型である。
1929年に正面玄関につくられたものは、医学の神であるアポローンとその妹のアルテミスが二頭立ての馬車に乗り、アポロンは弓を射ている。背景にはヤシの木が描かれ、これはもちろん熱帯の象徴であるが、ギリシア神話にも起源があり、アポローンとアルテミスの母親のレートーが出産した時に、そこにヤシの木が生えて葉を茂らせて出産を安楽にしたという。それをモダニズムのタッチで表現している。玄関の上には左右いずれも蚊の彫像があり、熱帯医学らしさが出ている。
 
 
この入り口のデザインが、1990年代に現在の校章にデザインされなおした。こちらの方が古典古代風の感じが出ている。地面には、杖に蛇が絡まったものが描かれている。これはアポローンの子で医神のアスクレピウスが持つ医療の象徴である。
 

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エコノミストより:親が子供と過ごす時間が長くなったことーただしフランスを除く(笑)

www.economist.com

 

11の富裕な国を選び、1965年と2012年における親が子供と過ごした時間の調査。全体だともちろん長くなっていて、一日54分から104分と、ほぼ2倍になった。男性はまだ短いが劇的に伸び、大卒の方が長いがそれ以外でも伸びている。

ただ一つの例外がフランス。この国だけ、大卒でもそれ以外でもはっきりと短くなっている。大卒もそれ以外も鮮明に激減している。これは、もともとフランスの親が子供と過ごす時間が他の国より長かったという事情もあるが、激減のため、現在の順位は低迷している。いったいなぜだろう。エコノミストに説明はない。

日本のデータはない。たぶん長くなっていると思うけれども。

『フィールド図鑑日本の野鳥』に関するとてもよいニュースを2つ

バードウオッチングでは日本野鳥の会の『フィールドガイド日本の野鳥』の増補改訂版を使っている。必須のレファレンスだけど、定価3,600円+税だから結構高い。もともと趣味はお金が掛かるものだから、仕方ないし、そういうものだ。実際、素晴らしいガイドである。

新しい『フィールド図鑑日本の野鳥』が出た。内容はほぼ同じで、サイズはふた回り大きい。買うべきかどうか少し迷ったけれども、趣味だからということで、強気になって買ってみた(笑)お値段は3,800円+税。

こちらは600種を超える全ての鳥の英語名が入っている!フィールドガイドの方は、私には何の役にも立たない学名が載っていて、イソヒヨドリと英語でいいたいときに、フィールドガイドを引くとMonticola solitarius という通常は何の役にも立たない学名が出てくる。フィールド図鑑だと、学名も載っているが、Blue Rock Thrush という普通の英語も出てくる。何という幸せ。これで鳥に関する英語力が一気に数十倍になる(笑)

もう一つは、全ての鳥の「和名」とその漢字表記が入っていることである。和名の漢字表記なんてフィールドガイドに書いていないので、そういうものを知らなかった。たとえば、イソヒヨドリならカタカナで表記される「イソヒヨドリ」が普通使われるが、実は日本鳥類学会が定めた漢字表記もあり、「磯鵯」である。オオヨシキリは「大葦切」、ジョウビタキは「尉鶲」か「常鶲」、オオジュリンは「大寿林」、「オオジュウイチ」は「大十一」か「大慈悲心」である。なんだこれは。いったいどんな言語に関する魔法が起きているんだろう、ここでは(笑)

 

「女性とコレクション」雑誌特集号論文の公募

私は医学史の研究者で、扱っている時代が色々と合わせても初期近代から20世紀中葉頃までである。医師に注目するとどうしても男性ばかりになる。看護人は女性の看護婦が多いが、まだきちんと研究したことはない。女性がたくさん存在して研究のマテリアルが潤沢にあるのは女性の患者になる。女性患者が何かをコレクトしたケースというのは、私が見ている精神病院の症例でも時々あり、出版されたものになるといくつかある。書いてみたいけれども、他の優先すべき仕事もあって、日程的にいって、この特集号に間に合わせてまとめあげるのはちょっと苦しい。

日本史の研究者やアーキビストたちも、女性が集めたコレクションについて何か言いたいケースはありませんか?もちろん医学や科学だけでなく、人文学、芸術、ビジネスなど、何のジャンルでもいいので、どうかご応募ください。

https://networks.h-net.org/node/9782/discussions/1157447/cfp-women-collections

CFP: Women & Collections

Discussion published by Juilee Decker on Tuesday, December 26, 2017 0 Replies

Your network editor has reposted this from H-Announce. The byline reflects the original authorship.
Type: Call for Papers
Date: February 15, 2018
Subject Fields: Archival Science, Area Studies, Women's & Gender History / Studies, World History / Studies, Humanities
Focus Issue:
Women & Collections
Guest Editors: Consuelo Sendino, Natural History Museum, London,
Janet Ashton, British Library, and Margot Note, Independent Consultant
Women have not been only inspiration for the cultural world, but been also active as collectors or researchers in collections. They have left their mark in science, natural history and art. Important contributions to cite chronologically are those of Catherine the Great of Russia (1762-1796, art collector), Frances Mary Richardson Currer (1785-1861, book collector), Mary Anning (1799 - 1847, fossil collector) and Gertrude Bell (1868-1926, archaeologist who helped with the establishment of the National Museum of Iraq with one of the best collections of Mesopotamian antiquities).
Although the role of women has been important in collections, it has not been so popular as with males. This issue will display different roles in which women have been active in collections such as active collectors, known by their input in collections or for inspiration.
Articles might be focused on any role played by women regarding collections:
* Women as collectors
* Women as collection researchers
* Women as inspirational point of view
* Women as collection subject
For this issue, we are seeking articles and case studies of 15-25 pages, reviews, technical columns, and observations. See https://rowman.com/Page/Journals for more information about the journal. For more information, contact the journal editor, Juilee Decker, jdgsh@rit.edu.
Published by Rowman & Littlefield, Collections is a multi-disciplinary journal addressing all aspects of handling, preserving, researching, interpreting, and organizing collections. Established in 2004, the journal is an international, peer-reviewed publication that seeks timely exploration of the issues, practices, and policies related to collections. Scholars, archivists, curators, librarians, collections managers, preparators, registrars, educators, emerging professionals, and others are encouraged to submit their work for this focus issue.
Authors should express their interest by submitting a 150-word abstract to the journal editor by February 15, 2018.The deadline for submission of final papers is April 1, 2018. Publication is anticipated for volume 14 or 15 with an issue date of 2018 or 2019.
Contact Info:
Juilee Decker, Ph.D.
Associate Professor, Museum Studies
Rochester Institute of Technology
Editor, Collections: A Journal for Museum and Archives Professionals
Contact Email: jdgsh@rit.edu
URL: https://journals.rowman.com/products/authors/751430-collections/list

パンデミックのSF小説

来年に一つパンデミックに関する論文を書ければいいと思っている。もちろんまだ研究の状況が分かっていない。パンデミックのゲームという新しいマテリアルが重要なピースだけれども、その話まで持っていけるかどうか分からないし、そもそもパンデミックを主題にした学術研究をしたことがないので、まったく見当がつかない。マテリアルや研究をぼつぼつ集め始めているというのが素直なところである。
 
エコノミストから来た特別面白いコラムの特集を読んでいたら、第二次大戦後のアメリカでパンデミックによる人類滅亡のSFが数多く書かれているという。George Stewart の Earth Abides (1949)、Richard Metheson の I Am Legend (1954)、 Stephen King の The Stand (1978) 、それから Max Brooks の World War Z (2006) などである。World War Z はしばらく前に翻訳の文庫本を買ったことがあったが、他のテキストは知らなかったので買っておいた。ついでに、小松左京の『復活の日』(1964) と『日本沈没』(1973)も読んだことがなかったから買ってみた。
 
アメリカの作品についての解説を読んでみたら、疾病の大流行―人類ほぼ壊滅―生き残った人々が問題の疾病の特徴を知り、新しい社会を構築するという三段階のプロセスがあるような気がする。そうすると、疾病研究と対策の部分が、パンデミックの話と重なる部分が出てきてゲームになるような気がする。
 
ちなみに小松『復活の日』は、イギリスの細菌兵器が盗まれてという話で、英訳は Virus であるとのこと。英語の論文にするときには、この話を冒頭に置こう。いや、学術論文を書くときには、本当は、こんなことを考えてはいけないのですけど。手持ちの持ち駒が弱くなっている時には、こういうことを考えるのですね。